元県民局長の匿名文書への外部への告発が「公益通報」に該当するのであれば、兵庫県の対応は「匿名通報の犯人捜し」「通報者の不利益処分」に該当し公益通報者保護法に違反する疑いが問題とされた。

百条委員会などで「元県民局長の自殺」と「斎藤知事のパワハラ」の二つがクローズアップされたため、世の中には、「パワハラと自殺」の問題のように受け止められ、「パワハラによって人が亡くなっている」かのような誤った認識が生じた。

「パワハラと自殺」をめぐる過去の問題

「パワハラと自殺」をめぐる問題は、過去にも多く発生している。

「電通過労死問題」は、電通の違法残業問題として大きな注目を集め、労働基準法違反の刑事事件に発展し、厳しい社会的批判を受けたが、そこには上司のパワハラの問題と、長時間労働を強いる「パワハラ的職場環境」の問題があった。女性新入社員は 2015 年 4 月入社。10 月から担当業務が大幅に増加。これに新入社員の研修や懇親会幹事などの雑務が加わり、11 月上旬にはうつ病を発症していたと推測されている。このような中、自ら SNS で長時間労働を訴える内容や上司などのパワハラ・セクハラを疑わせる内容も発信していた。10 月の月間所定時間外労働は入退館データとの突き合わせにより約 130 時間に達していた。そのような長時間労働が基本的に変わらない状況で、12 月 25 日に、女性社員が投身自殺したものだった。

2023年に宝塚歌劇団の劇団員が自殺した問題でも、遺族側がいじめ・ハラスメントが自殺の原因だとして真相解明を強く求め、劇団員の死亡について事実関係や原因を把握するため、外部の弁護士による調査チームを設置することが発表された。

11月14日、劇団の理事長らが記者会見を開き、弁護士チームによる調査報告書を公表したが、その調査報告書では、長時間労働は認めたものの、遺族側が強く訴えていた「いじめ・ハラスメント」の事実は「確認できなかった」とし、「業務以外」「個体側の脆弱性」などという表現で、自殺の原因が、劇団側の問題以外にあった可能性を示唆していた。それに対して、遺族側代理人が猛反発し、ただちに記者会見を開いて調査報告書を批判し、調査のやり直しを求め、最終的には、歌劇団は、遺族から求められていた謝罪と補償について合意し、阪急阪神ホールディングスの角和夫会長らが遺族に対して謝罪した