効率的にフォアグラを生産するため、大規模農場では、数千羽のガチョウやアヒルが狭いケージで飼育されます。

そしてそれらの肝臓を肥大させるため、強制給餌を行っているのです。

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強制給餌の様子 / Credit:Wikipedia Commons

ガチョウやアヒルたちは、口に漏斗をつっこまれ、胃に強制的にエサを送り込まれます。

この強制給餌の様子を、動画などで見たことのある人もいるでしょう。

そのため近年では、いくつかの国でフォアグラが「道徳的に問題のある食材」と見なされ、禁止する国や州が増えてきました。

日本でもフォアグラの輸入量は、ここ十数年で90%以上減少するなど、市場に出回らない食材となりつつあります。

こうした背景にあって、近年注目が集まっている「培養肉」の技術が役に立つと考えられるのです。

ウズラ細胞と培養技術でフォアグラを再現!香港で販売予定

培養肉とは、動物の可食部の細胞を組織培養することで得られる食用の肉です。

動物を犠牲にしないこと、土地利用の効率化、環境配慮などのメリットがあり、2010年代から商業化に向けた動きが本格化しました。

2023年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)が培養鶏肉の販売を承認しています。

そしてオーストラリアの食品会社Vowは、この培養肉の技術を導入することで、フォアグラの生産問題にアプローチしています。

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ウズラと培養技術でフォアグラを再現した「Forged Gras」 / Credit:Vow

彼らは強制給餌でフォアグラを作る代わりに、実験室でフォアグラに似た食材を作ることで、人々を楽しませたいと考えているのです。

Vow社が開発する培養フォアグラ「Forged Gras」は、正確にはフォアグラとは異なっており、日本産ウズラの細胞を使用しています。

これに植物由来の脂質とソラマメ由来のタンパク質、香料を組み合わせました。

実験室で79日間の培養プロセスを経て作られており、従来のフォアグラのように、動物が犠牲になることはありません。

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培養フォアグラを使用した裏巻き / Credit:Vow