首相を解任されたハムドック氏は、軍人中心の主権評議会の強烈な批判者となった。さらに内戦勃発後は、外国に逃れて、国軍のブルハン側の勢力にも、RSFのハメティ側の勢力にも、批判的に対峙する姿勢をとり、市民社会組織を束ねる動きをとっている。ケニアで会議を開いたりするが、ウガンダにいると考えられている。
私は、大学院でスーダン人の大学院生を指導対象の学生として教えている。内戦勃発前に来日したので、故郷が内戦に陥り、戻れなくなってしまった。タリバン政権の復権で故郷に戻る可能性がなくなったアフガニスタン人の学生なども指導していたことがあるが、戦争や政治に翻弄される人々の悲哀は、どんな場合でも切ないものである。
IGADの運営者側は、苦労してスーダンからの研修参加者を選んだうえで、ハラハラしながら様子を見ていた。幸い、研修参加者のレベルでは仲良くやっていただき、共同作業にも協力して取り組んでいただいた。成果がすぐには見えないのだが、将来に向けた布石として、極めて大きな意義を持つことである。そうした点も十分に視野に入れて、研修の意義を見定めて、実施している。
折しも、日本では、石破首相の国際会議での振る舞いが大きな話題となったようだ。会議や研修の大きな意義は、人と人とのつながりを作り、発展させるところにある。読書家であるがゆえに、その点を軽視する傾向があるとしたら、残念である。
硬直した官僚主義と権威主義がはびこる日本社会全体に、人間的なつながりの構築が生み出す可能性の大きさを軽視する風潮が蔓延しているとしたら、それはさらに残念なことである。
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「篠田英朗国際情勢分析チャンネル」(ニコニコチャンネルプラス)で、月2回の頻度で、国際情勢の分析を行っています。