パロディを合法化するには、英国のように個別権利制限規定を追加する方法と、米国のように権利制限の一般的権利制限であるフェアユース規定の解釈で対応する方法の二つがある。前者は図表3のとおり旧英領諸国やヨーロッパ大陸諸国が採用している。
2度にわたる改正を経ても道半ばの日本版フェアユースパロディを合法化するには、権利制限の一般規定であるフェアユース規定を導入する方法もある。公正(フェア)な利用であれば権利者の許諾なしの利用を認める規定である。最初に導入した米国の著作権法107条は以下の4要素を考慮してフェアユースを判定する。
利用の目的および性質 原著作物の性質 原著作物全体との関連における利用された部分の量および実質性(➡大量に利用したり、少量でもコアの部分を利用したりしていないか?) 原著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響(➡原著作物の市場を奪はないか?)
日本でもフェアユース規定の導入については過去2度にわたって検討された。最初に方針が示されたのは、知的財産推進計画 2009だった。
2011年には、文化庁の著作権分科会法制問題小委員会による報告書の中で、三類型を対象とする権利制限規定の一般規定を導入すべきであるとまとめられた。しかし、それを受けて行われた、2012年の著作権法改正では従来も必要の都度、行われてきた個別の権利制限規定の追加という内容に留まり、日本版フェアユース導入は失敗に終わったといわれた。
そうした中、2016年に次世代知財システム検討委員会が出した報告書の中では、もう一度柔軟な権利制限規定の導入に向けた法改正を検討するべきであるとの見解が発表された。報告書は柔軟な権利制限規定の例として図表3の三つの例を挙げた。
知財戦略2016に盛り込まれた柔軟な権利制限規定導入の提言を受けて、文化庁で検討した結果、図表4の一番右の著作物の表現を享受しない利用が2018年の著作権法改正で認められた。