「保護の理由がない者、身元を偽る者、あるいは規則を守らない者、特に犯罪を犯した者は、再び我が国を離れなければならない」と連立協定には記されている。また、欧州連合(EU)の亡命政策改革を支持し、「将来性のある滞在資格を持つ者のみが加盟国に移送されるべきだ」と明記されている。
9月1日に実施されたテューリンゲン州議会選では極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が2013年の結党以来、州レベルの選挙で初めて第1党に躍進した。AfDの大躍進について、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「ドイツの政治的激震」と表現した(「AfD、テューリンゲン州で第1党に」(2024年9月3日参考)。
テューリンンゲン州議会でトップとなったAfDのヘッケ党筆頭候補者は「歴史的な出来事だ。国民は変化を求めていることが明らかになった」と勝利宣言し、州首相就任に意欲を見せていたが、他の政党がAfDとの連立を拒否したために、政権を組閣できない。その一方、CDUが主導となってBSWとSPDの3党から成る連立政権の交渉が始まり、合意に達したわけだ。
同合意では左翼党から今年1月に離脱して新党結成したBSWが州レベルでは初の政権入りとなるだけに、その動向が注目される。BSWはテューリンゲン州議会選で15.8%を獲得し、ラメロウ現州首相が率いる左翼党(13.1%)の支持者を奪って躍進した。
当方がテューリンゲン州議会の動向に関心がある理由は、選挙で第1党となった極右政党が政権交渉に乗り出すことが出来ない状況に陥っているからだ。
オーストリアでは9月29日の国民議会選で極右党「自由党」が初めて第1党になったが、選挙後の連立交渉からは完全に疎外された立場にある。両者の状況は酷似しているのだ。民主的選挙で第1党になりながら、政権を発足できないのだ。AfDや自由党にとってはフランストレーションが溜まる状況だ。
一方、AfDを政権に参加させないために他の政党が政治信条の相違にもかかわらず連立政権を発足させるため、そのような連立政権は遅かれ早かれ政権内で対立が表面化し、崩壊する危険性がある。ドイツで連邦レベルで初の3党連立政権を組閣したショルツ政権が任期を1年余り残して崩壊したばかりだ(「極右『自由党』に政権を委ねられるか」2024年10月10日参考)。