実は胎児もお腹の中で「味覚」に一喜一憂しているのです。

英ダラム大学(Durham University)による2022年の研究で、100人の妊婦を対象とした4D超音波スキャンを行われ、母親が摂取した食べ物の味にさらされた胎児の反応が調査されました。

すると、お腹の中の胎児はある味には「笑い顔」の反応を、ある味には「泣き顔」の反応を示すことが確認されたのです。

これは胎児が味覚に対して直接的な反応を示す様子を捉えた初の証拠となっています。

研究の詳細は2022年9月21日付で科学雑誌『Psychological Science』に掲載されました。

目次

  • 胎児も「味」を感じている?
  • 母親の食べた物によって「胎児の表情」が変化した!

胎児も「味」を感じている?

当然ながら、母親のお腹の中にいる胎児は食べ物を直接食べることができません。

しかしながら健康にすくすくと育つためには、胎児にも十分な栄養が必要です。

そこで胎児は母親の体を通して栄養をもらっています。

その主な栄養源の運び役を担うのが「臍帯(さいたい)」です。

臍帯は胎児と胎盤(つまりは母体)とをつなぐヒモ状の器官を指し、一般的には「へその緒」の名前で知られています。

へその緒は胎児の生存と成長に欠かせない器官であり、ここを通って母体から栄養分を含む血液や酸素が胎児へと送られるのです。

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胎児は「へその緒」から栄養をもらう/ Credit: canva

これで胎児はお腹の中ですくすくと成長することができますが、その一方で、胎盤内を満たしている羊水には母親が摂取した食物の化学物質が溶け込むことが知られています。

胎児が発達中の口から羊水を飲み込むことを踏まえると、以前から「胎児は羊水を通じて母親が食べた物の味を感じ取っているのではないか」と考えられていたのです。

しかしこの仮説を証明する研究はこれまでなされてきませんでした。