アメリカの消費者もHEローンには懲りたようだが・・・・・・

残念ながらこの2種類のローンが激増し続ける可能性は高そうです。次のグラフをご覧ください。

HE(ホームエクイティ)ローンとは、持ち家が買ったときの価格に比べて今売りに出せばもっと高く売れると評価された場合、評価額と支払価格との差額(評価益)分をその家を担保に貸してくれる制度のことです。

評価額が上がったままとか、もっと上がれば問題はないのですが、下がってしまうとこのローンに手を出さなければ持ちつづけていられた家を手放してローンを精算しなければならないこともあります。

そんなわけで、このHEローンはサブプライムローンバブルが弾けてからと言うもの、低迷続きです。

ですが、自動車ローンとクレジットカードローンは急上昇を維持しています。とくにクレジットカードローンの8000億ドルから1兆1000億ドルまでの伸びは垂直に近い急上昇でした。

しかもアメリカ国民の多くが、我々日本人から見ると驚くほど少額でも突然の出費に対応するだけの預金がないと言うのです。

アメリカ国民の32%、約3分の1が500ドル(約4万円)未満の突然の出費に対応できないと言っています。そして2000ドル(約16万円)未満の突然の出費に対応できない人が52%、過半数です。

この人たちは、ちょっと高めの治療費を必要とする病気や怪我でも、他のいろいろな不時の出費でも簡単にローンの支払いが滞ることになるでしょう。

延滞続出が懸念されるミレニアル、Z世代

中でも怖いのは、Z世代とミレニアルの人たちのあいだでは現状ですでに2ケタのクレジットカードの限度額一杯の借入をしているという事実です。

「他には借入のできるところがないから、急場はクレジットカードローンでしのごう」という手が使えず、むしろ急の出費でなんとか払い続けてきたクレジットカードローンの支払いができなくなってしまう可能性が高いと思います。

個人世帯債務のうち、クレジットカードローンはまだ5%台半ばですが、その中でもう8.9%が30日以上の延滞になっています。そして、懸念していたとおり、中でも18~29歳、30~39歳という年齢層でクレジットカードローンの延滞が多くなっています。

次のグラフは30日以上延滞ではなく、もうそろそろ債権回収会社に売ってしまおうかという90日以上延滞の年齢層別総融資残高に対する比率ですが、18~29歳、30~39歳のグループは、この段階まで延滞の進んでいるローンが9%以上を占めているのです。

アメリカの借り入れに依存した「好調な消費」は、ほぼ確実に多くの差し押さえなどを伴いながら失速していくでしょう。

その際、これからのアメリカ経済を担う18~29歳と30~39歳グループに最も大きな痛手を残してアメリカ型消費主導経済は崩壊していくことになるのです。

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編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2024年5月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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