こんにちは。
ごく最近Xに投稿した、現在アメリカ国民の多くが「ファストフードでさえ高すぎて食べられない」と考えていることについて、それではいったい何をどうやって食べているのだろうという趣旨のご質問をいくつかいただきました。
アメリカの庶民生活は本当にきつい。健康上ではなく「経済的理由で #ファストフード は食べられない」との回答が年収3万ドル未満の世帯で71%。1ドルは精々80円の価値で年収240万円未満なら仕方ないが、3~5万ドル(240~400万円)世帯でも同じ回答が60%。週に1~2回、あるいは0回の世帯が全体の79%! pic.twitter.com/14B5Onrt3E
— 増田悦佐「アメリカ消滅(ビジネス社)」「生成AIは電気羊の夢を見るか?(ビジネス社)」 (@etsusukemasuda2) May 26, 2024
そこで今日は、アメリカの庶民は今どうやって食事を賄っているのか、そしてなぜそこまで困窮しているのか、なぜアメリカでは日本以上に世代間格差が広がっているのか、そして常に債務不履行ぎりぎりの綱渡りのような暮らしをしている人たちがアメリカ経済をどう変えそうかといったことを考えてみようと思います。
ファストフードチェーンの値上げが凄まじいやはり、まず問題とすべきは昔は庶民が気楽に食事をできる場だったファストフードチェーンが軒並みどんどん値上げをして、庶民の手の届かないような価格設定になってしまったことでしょう。
次のグラフをご覧ください。
等間隔で刻んだ目盛りに欺されそうになりますが、2014~19年、つまり過去10年間のうち前半の5年間はジミージョンズというチェーンだけがかなり突出した値上げをしていて、その他はだいたい5~15%、5年累計のインフレ率としては物価一般とほぼ同じペースでした。
それが、世間的にはあまり大きな話題のなかった2019年頃から急激に大幅値上げをするチェーンが多くなり、10年間の累計をとるとチポトル、タコベル、ポパイ、マクドナルドの4チェーンが75~100%という大きな値上げ率を押し通していたのです。
こうした値上げの結果、ファストフードチェーンはアメリカ国民にとって気軽に行ける外食あるいはテークアウトの店ではなくなりつつあります。
上段を見ると、25%が「まったくファーストフードを食べない」と答え、過半数の54%が「週に1~2度しかファストフードを食べない」と答えています。つまり、アメリカ国民の約8割がファストフードは週に2回以下しか食べていないということになります。
もちろん、この中には「あまり健康に良くないから食べない」とか、「あまりおいしくないから食べない」というどちらかと言えば贅沢な理由でファストフードを食べる回数を減らしている人もいるでしょう。
でも、多くの人が経済的な理由、つまり「ファストフードは高すぎてちょいちょい食べに行くわけにはいかない」と考えていることは、下段の「ファストフードは贅沢品になったか」という質問への所得階層別の回答にはっきり出ています。
年収が3万ドル未満世帯の人たちの71%が、この質問に「はい」と答えています。現在の為替レート1ドル=150~160円で考えると、3万ドルでも450万円~480万円になりますからそれほど貧しいという印象はありません。
ですが、私は実際にアメリカで生活する人にとって1ドルは日本円で言えばたかだか80円程度の価値しかないと思っています。ですから年収3万ドル未満というと約240万円未満、月に20万円の収入ではたしかにファストフード店での食事はハードルが高いでしょう。
私がちょっとビックリしたのは年収3万ドル~5万ドル未満の世帯でも、60%が「ファストフードは高すぎてひんぱんには食べられない」と感じていることです。年収400万円近い人たちでも、やはりファストフードは高すぎると考える人が多数派のようです。
世代別や家族構成別の答えも、なかなか示唆に富んでいると思います。
世代別で見ると、ミレニアルとZ世代はライフスタイルや考え方などではかなり差があるようですが、経済的にかなりきつい生活をしているという点では、ほとんど違わないようです。
また、ぎりぎり過半数にはなっていませんがX世代(日本流に言えば、段階と段階ジュニアのあいだにはさまれた谷間の世代)の48%というのもかなりきびしい数字で、ベビーブーマーとその後の全世代には歴然とした経済的格差があることがわかります。
家族構成別で見ると、18歳未満の子どもがいる世帯がいちばんきついのはわかりやすいですが、子どもがいない世帯より18歳以上の子どもがいる世帯のほうが「ファストフードはぜいたく品」との答えが少なくなっています。18歳以上の子どもはなんらかのかたちで世帯所得を増やすことに貢献しているのかもしれません。
で、今回のご質問の核心に迫ってみましょう。