ファストフードが贅沢品なら、どんな食事をしているのか

簡単な答えは、あまりにも月並みですが、スーパーなどで食材を買ってきて自宅で炊事をするということになります。それで節約になるのかというと、そうとう大きな節約ができる家庭もあります。

何年かアメリカで生活して、たまには食事にご招待されたりすると、ご馳走になっていてこんなことを言うのは失礼ですが、アメリカ人一般が食べものに対する要求水準が非常に低い人たちだということがわかります。

野菜などは長期間冷蔵庫に入れっぱなしで、シャキシャキ歯ごたえのあるはずのものがくたくたになっていても、みずみずしいはずのものがパサパサになっていても、ほとんど気にしません。

漁師町にでも行けば違うかもしれませんが、魚は缶詰や瓶詰め以外のものを料理しているのを見たことがありません。それでも魚を食材に使うということ自体が、非常にエスニックで特別な料理をしているという感じです。

なるべく安上がりにハイカロリーのものを詰め込めればそれでOKという感じだからこそ、マカロニアンドチーズとか、スパムサンドイッチとかが定番になっているのでしょう。

私がアメリカで暮らしていたのは1977~84年でしたが、その頃からアメリカの平均的な家庭での料理のバラエティの乏しさ、とくに男性はハイカロリーできつめの味付けなら満足という印象はあって、それが未だに続いている感じです。

1970年代後半にはアメリカ文明がくたびれ始めていたことは歴然としていましたが、アメリカ国民の食に対する無頓着さは、アメリカがもっとはるかに若くて健康だった頃から変わっていないようです。

この女性、専業主婦という生き方をプロとして追求している感じがあります。

でも、いくら節約は美徳と言っても、親子4人と猫1匹で(まあ猫は野菜にはあまり興味がないでしょうが)1週間に食べる生鮮野菜がセロリ2束、カリフラワーかキャベツ、枝に付いたままの豆1山だけというのは、淋しすぎると思いますが。

アメリカがまだ若く健康だった時代からこうだったのですから、年老いて不健康な生活習慣もいろいろ身につけてしまった現代アメリカ社会で「ファストフードさえ高すぎて食べられなくなった」人たちがどんな日常生活をしているのか、非常に気がかりです。

「借金で消費」が美徳になってしまった社会

まず驚くのは、アメリカ国民の消費水準が1990年代後半のGDPの65%で横ばいになっていた状態を脱してから、まるでタガが外れたように消費が拡大していることです。

そもそもGDPの65%という水準が、1952年以降約40年間到達したことのなかった高さなのです。

ところが、2000~02年のハイテクバブル崩壊、そして2007~09年のサブプライムローンバブル崩壊にもかかわらず、21世紀のアメリカ経済はほとんどの年でGDPの67.5%以上を消費に遣っています。

もちろん、しっかり稼いだ分を消費に回しているなら大いに結構なのですが、どうもそうではなく、どんどん貯蓄を下ろして消費し、それでも足りなければクレジットカードローンのような高金利でカネを借りてまで消費を増やしている気配が濃厚なのです。

純貯蓄がマイナスとは、その年に新規に貯蓄した金額を上回る預金の取り崩しがあったということです。そして今、2007年のようにバブル崩壊があったわけでも、2020年のようにコロナショックで経済封鎖があったわけでもないのに、純貯蓄がマイナスになっています。

いちばん危険な借金を増やしている米国民

で、貯蓄を取り崩すだけでは手に入らないモノやサービスを購入するために借金をするわけですが、さまざまな消費者向けローンの中でもっとも金利の高いクレジットカードローンの利用が急激に増えています。

上段には、アメリカの個人世帯が年率21.5%という高利を取られるクレジットカードローン借入を2021年以降急激に増やし、遂に総残高が1兆1000億ドルに達したと書いてあります。

そして、下段を見ると2010年頃までは住宅ローン金利の約半分にとどまっていた住宅以外の個人向けローンの金利負担が急激に住宅ローンに近づいていることがわかります。次のグラフが明らかにしているように、消費者が借りているローン全体の70%は住宅ローンです。

それでも金利負担では、住宅ローン以外の消費者向けローンはクレジットカードローンと同じように高金利の融資が多いので、支払金利は住宅ローンと非住宅ローンが6000億ドル目前でほぼ同額となっています。

つまり、非住宅ローン全体の平均金利は住宅ローンの約2.3倍にあたるのです。

もちろんアメリカの住宅ローンは30年固定金利のものが多く、つい最近まで2%台だったローンを借りてまだ支払中の人が多いのに対し、非住宅ローンは支払期限も短く金利が激しく変動するからです。

それにしても、GDPの5%近い金額を毎年金利として支払っていかなければならないのですから、アメリカの個人世帯にとっては大変な重荷です。

連邦準備制度(Fed)が2022年春に連続利上げに踏み切ってから、消費者向け融資の延滞が急ピッチで増えています。

水準としては、2022年以前にアメリカとしては異例の低金利時代が10年以上続いたことの恩恵を受けて比較的低めなのですが、増え方のスピードが問題です。

次のグラフでおわかりいただけるように、どちらも金利が高めのクレジットカードローンと自動車ローンでは、延滞中の金額が総融資残高の8%を超えました。

今のところクレジットカードローンも自動車ローンも、延滞から債務不履行に転じた金額の個人世帯可処分所得に対する比率はかなり低めにとどまっています。

現状では、クレジットカードローンと自動車ローンを合わせて、個人世帯の可処分所得の1%に届くかどうかという水準ですから、サブプライムローンバブル崩壊期に住宅ローンが大量に焦げ付いたときのような大きな打撃を個人消費部門が受ける可能性は非常に低いです。

でも、黄信号が赤信号に変わってもまだまだクレジットカードローンや自動車ローンの利用が拡大し続ければ、延滞から債務不履行に移行する金額もどんどん増えていくでしょう。