二つ目は66年の佐藤の総裁再選。中曽根のいた河野派は、佐藤支持と反佐藤で割れる。中曽根は前年に亡くなった河野の遺志を継ぎ、負けると判っていながら藤山愛一郎を支援した。その時の境地を「大義名分があり、主義主張が鮮明であれば、負け戦に加担することも政治にはある」と書いている。
ところが選挙に勝った佐藤が保利茂を介して、会いたいと。会うと、「沖縄返還に命懸けで取り組みたい、挙党一致で米国に当たる必要があるので、助けて欲しい」との話。受けた中曽根には運輸大臣を、との話が来、派の野田武夫を押したが聞き入れられず引き受けたので「風見鶏」と言われた頃の話だ。
三つ目の話は佐藤後継の角福戦争。佐藤は予め「どっちが総理になっても喧嘩はするな」と二人を諭していた。つまり、総裁選第一回投票で一位になった者が過半数を取れなくても総裁になって、二位以下の者は譲れ、ということ。二人はこれに同意した。
が、直後に田中は「あの話はなかったことにして欲しい」と佐藤に頼み込む。中曽根は、自らが望む日中国交回復は、岸の流れを汲む台湾派の福田では無理と、これの推進を条件に田中支持に回り、結果は156票の田中が福田に6票差で総裁の座に就いた。3位と4位の大平と三木も日中国交回復派だった。
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目下の総裁選に戻れば、まだ10日を残しているものの世論調査を見る限り、小泉・石破・高市と他の6人とは10~20%ポイントの差がある。縷説した中曽根の『自省録』のエピソードを読む限り、自分の政策を実現したいなら、6人は降りて小・石・高の政策を同じくする何れかの応援に回るべきと知れる。
現職幹事長の茂木と現職官房長官の林はプライドが許すまいから、残り10日頑張れば良い。が、若い小林と安定感抜群だが支持率最下位の加藤は、高市を押し上げて政策を実現すべきだ。小泉と石破の政策は、余りに小林・加藤のそれと距離がある。河野は残るも良し、前回の借りがある石破支持に回るも良かろう。