高市氏が「金利をいま上げるのはあほや」、「アベノミクスを継承し、金融緩和を継続する」と、市場関係者が喜びそうな発言をしてきました。日本が今、やるべきことに向き合わない高市氏の「アベコベミクス」でした。石破氏は当初は「金融取引課税の強化」(高額所得者は源泉分離課税を禁止の意味)という正論をいっていたのに、うやむやになりました。
日本経済は長期にわたる異次元金融緩和・財政膨張に安住し、マネー市場もそれを織り込んでしまい、そこから抜け出せない。日銀が7月に利上げした途端、3万3900円から2200円も急落し、さらに8月5日には、4400円(過去最大)の下落となりました。
慌てた日銀は、内田副総裁が講演で「追加利上げは慎重に考えるべき状況にある」と、植田総裁とは逆に発言をして火消しに回りました。今回の総裁選後の動きをみても、10月2日に石破首相と植田総裁が会談し、首相は「現在、追加利上げをする状況にない」と述べ、金利政策は日銀の専管事項という禁を破った発言に及びました。財政金融政策の変更にマネー市場が抵抗して、「待った」をかけてしまうのです。
要するに、異次元緩和、財政拡大(1000兆円を超す国債発行)策がマネー市場に織り込まれてしまい、それを前提に相場がなり立っている。あまりにも長期にわたる異常な政策の弊害で、新首相の政策変更についていけないのです。
元日銀理事の山本謙三氏の新著「異次元緩和の罪と罰」(講談社新書)は「円安、異次元緩和がもたらし問題に対する危機感が聞こえてこない」と警鐘をならし、「異次元緩和が実質経済成長率に与えた効果は、緩和後の10年間でプラス0.67%、緩和前の10年間で0.63%で、ほとんど差はない」と、経済効果を否定してます。その一方で日銀は膨大な国債(1000兆円)、巨額のETF(上場投資信託、時価47兆円)を抱えてしまい、市場に影響を与えないように売っていくと、何十年もかかる。