LUUPへの困惑や怒りは、目新しいものへの過剰反応だという声があった。かつて携帯電話やビデオゲームが普及するとき発生したモラル・パニックと同類と言いたいのだろう。
モラル・パニックとは「社会の秩序に脅威をもたらすとみなされた特定のグループや、グループを構成する人々に向けられる、多数の人々により表出される激しい感情」のことだ。
携帯電話の普及期には、電車のなかで電話をかける声が耳障りというだけでなく電磁波の悪影響があるとか、若年層にとって犯罪や売春の温床になっていると猛烈に批判された。ビデオゲームがブームになると、根拠のないゲーム脳という概念が生み出されて情操や知能の劣化だけでなく、ここでも犯罪などの原因になると騒がれた。
LUUPへの批判にモラル・パニックの要素が皆無とは言えないだろうが、紹介した男性の例や他のさまざまなトラブル、交通法規を無視したユーザーの運転、消火栓と水道メーターの例、問題の解決を放り投げたLUUP、警察から天下りを受け入れる同社、面倒を避けるかのような警察と、目新しいものへの拒絶反応を超えた社会問題が発生している。保守的な道徳観でLUUPが嫌われているのではなく、実害に悲鳴が上がったのだ。
LUUPの社員がいまに刺されるのではないかと言った男性は、暴力的であったり、日頃から不平不満を口にするような人物ではない。どの街にも、職場にも、趣味の仲間の中にもいそうな人物から、搾取と不平等への怒りがほとばしった。ついにここまで来たのだ。
「世の中を支えるコストを僕たちから搾取して、食べるご飯はおいしいですか」
こんな嫌味を言いながらも、自分はルールを守り、安全や秩序のためのコストを支払い続けるほかないと男性は言った。
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最後に、LUUPにとって有利な規制緩和を行ったMaaS議連(モビリティと交通の新時代を創る議員の会)のメンバーを列記しておく。
発起人リストより(順不同) 逢沢一郎、赤澤亮正、阿達雅志、甘利明、石井正弘、石崎徹、岩井茂樹、石原伸晃、今枝宗一郎、上野宏史、勝俣孝明、神山佐市、城内実、桜田義孝、佐々木紀、菅原一秀、田中和徳、高橋克法、武井俊輔、津島淳、西村明宏、額賀福志郎、平沢勝栄、藤丸敏、細田博之、三ツ矢憲生、宮路拓馬、盛山正仁、八木哲也、山際大志郎、山口泰明、山田美樹、山本有二。