というわけでパートやアルバイトの人が厚生年金に加入させられると、本人負担分の約10%が天引きされるのは当然ですが、会社負担分はどうするのかという話になります。
会社負担分も人件費から出すという原則からすれば「会社負担分だけ賃下げするから」と言って賃下げするしかないですが、さすがにそれはハードルが高いでしょう。
というわけで一時的に会社の負担は増加することになります。
でも今はインフレなのでさほど心配はいりません。ほっておいても人件費のパイが増えていく企業が大半でしょう。その中で賃上げを抑制しつつ、会社負担分を吸収していくことになると思います。
結果、物価はどんどん上がっていくのに、なぜか全然賃上げされない職場が続出するでしょう。
・ブラック化する職場が増える
会社が一時的にでも負担してくれればまだマシですが、そんな余裕のない会社はどうするか。
たぶんブラック化するでしょう。これまで5人で回していた職場を3人でまわさせる。サビ残や経費の自腹化を通じたコストカット等で、会社負担の増加を吸収するわけですね。
「こんな職場で働けるか!」といって転職すると、今度は最初から「社会保険料の会社負担分を転嫁済みの賃金の求人」がずらりと並んでお出迎えしてくれます。
なので正社員同様、逃げ場のない社会保険料地獄が始まることになるでしょう。
ところで、上記のトレンド、どこかで見覚えがあるぞという人は少なくないはず。
何年経っても微々たる賃上げしかされない職場。社会の幅広い業種に拡大するブラック企業。
そう、それはまさに失われた30年、就職氷河期世代が世に出たころの時代そのものですね。
実はあの時代も、消費税は長く据え置かれる一方で、厚生年金をはじめとする社会保険料はほぼ一貫して増加し続けた時代なんですね。
つまり企業が賃金を抑制することで一生懸命に社保の負担増を吸収していたわけです。あれと同じことがこれから起こるのかもしれません。