死体とセットでない場合(=手袋の場合: チンパンジーが見慣れた手ごろな物体)でも臭いを嫌がるのかを検証しました。
その結果、チンパンジーは無臭の時と比べてプレシトシンの臭いをかがせた時のみ、バケツから距離を取ることが分かりました。
またこの時、バケツの上に乗っているものが、はく製か手袋かは関係がありませんでした。
さらにこの研究では、プレシトシンを臭いとして感じ取れない濃度でも試していますが、悪臭として感じ取れないレベルの場合でも、チンパンジーたちは忌避反応を示したのです。
つまり、死体と死の臭いがセットになったことによって特に反応が強まるというわけではなく、死体の存在が無くても忌避反応が起き、さらに臭いとして感じることが出来なくても忌避反応が起きることが示されたのです。
この結果より、実際に死体を見ていなくても、死臭を意識的に感じていなくても、低濃度のプレシトシンが発生しているだけで、生物はなんとなく嫌な感じがするから近づかないでおこう、という行動を実際にとることが科学的に証明されました。
危うきに近寄らず、ということわざもありますが、なんとなく嫌な感じがする、というシチュエーションに出会ったときには、そっとその場から離れるのが安全かもしれません。
それは危険を感知した本能の呼び声かもしれないのです。
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参考文献
The Smell Of Death Has A Strange Influence On Human Behavior
https://www.iflscience.com/the-smell-of-death-has-a-strange-influence-on-human-behavior-76452
Putrescine–a chemical cue of death—is aversive to chimpanzees
https://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/ja/publications/JamesRAnderson/Anderson2021-bp.html