つぎは税収増の還元という観点から考察してみたい。控除額を10万円引き上げると1兆円ほどの減収になると政府は試算しているので、逆に考えれば1兆円を還元するには控除額を10万円引き上げればよいということになる。2000年比で所得税収(源泉徴収額)は約2.4兆円増えているので、これを原資に還元をおこなうとすれば、24万円の控除額引き上げとなる。現行の103万円+24万円で127万円。
直近の物価上昇率や税収増の還元という観点から検証してみても、128万円は妥当な設定と言えるのではなかろうか。今後の物価上昇率を予測した上で上乗せするのかなど、控除額の更なる引き上げについては議論の余地があるように思える。
自公と国民民主の協議によって控除額がいくらまで引き上げられるのか。こればかりは結果を待たねばならないが、私としてはやはり128万円程度が妥当ではないかと考えている。
最後にそもそも、103万円の壁がここまで注目されるようになったキッカケは何だったのだろうか。事の発端は、今から約1年前の令和5年9月25日に「成長の成果である税収増を国民に還元する」と岸田前総理が記者会見で述べたことだったように思う。
岸田政権はそれから間もなくして「好循環経済」を掲げ、名目GDP、企業の経常利益、設備投資、名目雇用者報酬などで過去最高の実績を残した(好循環経済については以前の寄稿「私が岸田総理の経済対策に大賛成なワケ」を参照)。
物価高を超える賃金上昇の実現や国民の実感までは、あと一歩というところまで来ているように思える。好循環経済の流れを止めないためにも、103万円の壁を128万円+αに引き上げることと、控除の所得制限が撤廃されることを期待したい。