図表3 給与所得控除額の提案筆者作成

修正案を作成するにあたり、国民の所得が2000年時点と変わっていないので、控除額も2000年時点の水準へまず戻す必要があると考えた。その上で、昨今の物価高や税収増を考慮して、控除額の上乗せをしている。経済を回すには、国民の可処分所得を広く増やし、消費を活性化させる必要があるので、所得制限などは撤廃している。

所得制限の撤廃

現行の所得税制では、103万円までの収入に対しては所得税がかからないが、103万円を超えた所得に対しては所得税が累進課税されていく。累進課税は、所得が大きくなればなるほど、納める税額のみならず、税率も上がっていき、負担割合が大きくなっていく仕組みだ。この仕組み自体は海外でも一般的であるし、問題があるとは考えていない。

問題は、累進課税に加えて控除額が縮小されたり、所得制限が設けられたことである。2000年時点の税制では、控除額に上限や所得制限は設けられていなかったが、図表2と3で示したように、2020年の改正によって追加された経緯がある。一定以上の所得になると、納める税金の税率が高くなることに加えて、控除までも無くなるという、中・高所得者の冷遇政策と言えよう。

私は「過度な低所得者優遇」、および「過度な中・高所得者からの徴収」という偏った構図は、好循環経済の大きな阻害要因であると考えている。実際に図表1で示したように、国の所得税収は大幅に増えているが、国民一人あたりの所得税負担は増え、平均給与は微減している。この問題には真剣に向き合わねばならない。

問題点については過去の寄稿「岸田総理は「減税メガネ」すらも超えられるか」でも触れているので、詳細は割愛したい。

128万円の妥当性

では、改めて直近の物価上昇率などを用いて、128万円に妥当性があるのかを、少し検証してみたい。

まず、基礎控除額については、所得金額2400万円以下の場合、現行税制の方が2000年時点より控除額が高いので、これを基準に考えることにする。現行の控除額に現行税制が適用された2020年比の物価上昇率を乗じることにする。そうすると48万円×108.9%で52.3万円となる。今度は、給与所得控除額を現行の55万円から2000年時点の65万円に戻した上で、昨今の物価高を反映させるとすれば、65万円×111.6%で72.5万円となる。合算すると約125万円ほどだ。