富裕層は株や不動産を多く持つため、その上昇からくる恩恵を受けやすい一方、低所得者層にその恩恵は少ない。さらに食料品、家賃など高騰する物価や高金利が、最近の雇用の減速もあいまって低所得者層の家計を圧迫しているのだ。

ゆえに、全体としてみれば可処分所得を大幅に増やした富裕層に隠される形で問題ないという結論になるが、中身をみると、苦しむ低所得者層が存在し、その人たちは負債を増やしている。それを端的に表すのがクレジットカードの延滞率の急上昇だ。インフレはいつの時代も弱者に厳しいのだ。

さらに学生ローンが気になる。

学生ローンは、コロナ禍における支援策の一環として、2020年3月以降、支払が猶予されていたこともあり、2020年以降はおおむね横ばいだ。そして、2023年10月に支払が再開されたのだが、同時に1年間の支払猶予期間もあったため、約半数が支払を再開していなかったようだ。しかし、その支払猶予期間も一部を除き終わった。

また、90%超の学生が利用する連邦学生ローン(政府から借りられる学生ローン)の延滞は、2024年までは信用調査機関に報告されないことになっている。これにより、2024年Q3における学生ローンの90日以上の延滞率はわずか0.49%であるものの、2025年以降、学生ローンの延滞率は、コロナ前の水準に向かって上昇していく可能性が極めて高い(報告されていないから明るみに出ていないだけで、実際の延滞率・延滞額は既に急上昇を始めている可能性すらある)。

もともとコロナ以前は、学生ローンの延滞率・延滞額は、クレジットカードや自動車ローンよりもはるかに高かったのである。これが元の水準に回帰するだけで、それなりのインパクトを持つだろう。

ただでさえ、クレジットカード債務で悩む人が増えているなか、学生ローンの返済が再開したことにより、困窮する人がさらに増えるのは間違いない。学生ローンを負っているのは、主に10代~40代、これはクレジットカード債務に悩む人と世代も重なるのである。