利用者に対して補償する仕組みを導入すべき

 では、メルカリが取り得る有効な対策というのはあるのか。

「プラットフォームの利用者のなかには非常に低い比率(通常は1%以下)ですが、犯罪目的でプラットフォームを利用する参加者が出現します。クレジットカード会社のように利用者が安心してプラットフォームを利用できるように、さまざまな詐欺対策を行ったうえで、それでも起きてしまう不正利用についてはカード会社が補償する仕組みを導入するほうがプラットフォームとして発展できる傾向があります。

 メルカリもプラットフォームとして規模が大きくなったタイミングで、詐欺についての対策を打ったうえで、それでも生じた損害についてはプラットフォームが利用者に対して補償する仕組みを導入すべきだったのではないでしょうか。遅きに失した感はありますが、今回の事件をうけメルカリではCEOが謝罪をしたうえで、『万が一トラブルにあわれて、お客さま同士での解決に至らない場合などは返品・補償の対応を行い、お客さまに安心してご利用いただく取り組みも推進しています』と方針転換の考えを表明しました。

 このまま『詐欺が放置されるサイト』というイメージが利用者の間で定着すれば、メルカリはいらないものだけが取引されるサイトとなり、価値あるものの取引はヤフオクへと流れてしまうでしょう。どこまで利用者の信頼を取り戻すことができるのか、メルカリは自らを難しい立場へと追いやってしまったようです」(鈴木氏)

 前出・中堅IT企業役員はいう。

「たとえば、出品者の手元に購入者から返品された商品が届き、出品者が確認して承認処理をしない限りは購入者に返金されない仕組みを導入したとしても、本当に問題のある商品を送られた購入者が出品者の抵抗を受けてきちんと返品手続きを完了できないケースが生じる懸念もあるので、なかなか難しいです。返品詐欺はれっきとした犯罪とはいえ、どこまでメルカリと警察が本気で動いてくれるのかは分かりませんし、メルカリはあくまで個人間取引の仲介プラットフォームを提供しているにすぎないので、責任を負うにも限界があるでしょう。そうなると、購入者のなかには悪意のある人物が混ざっているという認識を常に持って、タダで取られたら困るものは出品しないといった自衛策をとるしかないようにも思えます」