では彼らはどうやって自らの複製を作っているのでしょうか? その具体的な方法が「地下茎」です。
地中に向かって茎を伸ばすことで、そこから根や芽が出て成長し、新たなクローンが生まれます。
P. オーストラリスは、こうして勢力を拡大していたのです。
同様の例では、米国ユタ州のカロリナポプラなどが知られていて、こちらも根のつながった単一の木が森を形成しているとされています。
一方で、研究チームは「シャーク湾のような厳しい環境で、これほど大規模にクローン増殖できたのは実に驚くべきこと」と指摘します。
通常であれば、有性生殖により遺伝的多様性を豊かにすることが、厳しい環境や気候変動に適応するのに最良の方法です。
クローン増殖は遺伝的多様性に乏しく、環境変化に対してぜい弱になりやすい傾向があります。
実際、2010年と11年の夏に、西オーストラリアの海岸線を厳しい熱波が襲い、同地の生態系を直撃しました。
ところが、P. オーストラリスは、広範囲にわたって被害を受けたにもかかわらず、すぐに回復し始めたのです。
チームはこれについて、「P. オーストラリスは、180平方kmの範囲にわたり、わずかな体細胞の突然変異(子孫に受け継がれない程度の小さな遺伝的変化)を起こすことで、それぞれの場所ごとの環境変化に適応しているのかもしれない」と考えています。
これはまだ仮説の段階であり、チームは今後、この問題の解明に取り組んでいく予定です。
まとめ
海草は嵐の被害から海岸を守り、大量の炭素を蓄え、非常に多様な野生生物の生息地を提供しています。
そのため、海草群の保全や復元は、気候変動の緩和や生態系の維持にとって不可欠です。
P. オーストラリスは、西オーストラリアの海岸線を守る”巨大なバリア”となっているのかもしれません。