そのためこの植物は山手線が囲む土地の3倍近い範囲に広がっていることになります。
シャーク湾は、約8500年前、最終氷期の終わりに海面が上昇したことで誕生しました。
シャーク湾は、栄養分が少なく、海草のストレスとなる水中の光量が多いことで知られます。また、水温の変動が大きく(年によっては17〜30℃の幅がある)、塩分濃度も場所によって2倍ほど違います。
こうした厳しい環境にもかかわらず、P. オーストラリスは適応と繁栄に成功しました。
正確な年齢を特定するのは困難ですが、その規模や成長速度から、シャーク湾での出現時期は約4500年前と推定されています。
では、この厳しい環境で、P. オーストラリスはいかに増えていったのでしょう?
「地下茎」によりクローン増殖
P. オーストラリスが他の植物と異なる点として、その巨大さ以外に、染色体の数が通常の植物の2倍であることが挙げられます。
これは、専門家が「倍数体」と呼ぶものです。
ふつう、植物は両親から半分ずつ染色体をもらい、2本対になった「二倍体」の形をとります。
ところが、P. オーストラリスは受け取る染色体の数が2倍、つまり親からすべてのゲノムを受け継ぎ、複製しているのです(=クローン)。
こうした倍数体の植物は繁殖能力を持たない(不稔)であることが多く、そのままにしておくと、有性生殖(オスとメスの交配)なしに、無限に増殖できます。
これは意外と身近な植物にも見られる性質で、代表的なのはジャガイモです。