そのためこの植物は山手線が囲む土地の3倍近い範囲に広がっていることになります。

P. オーストラリスの群れ
P. オーストラリスの群れ / Credit: UWA – Largest known plant on earth discovered at Shark Bay and it’s 4,500 years old(2022)

シャーク湾は、約8500年前、最終氷期の終わりに海面が上昇したことで誕生しました。

シャーク湾は、栄養分が少なく、海草のストレスとなる水中の光量が多いことで知られます。また、水温の変動が大きく(年によっては17〜30℃の幅がある)、塩分濃度も場所によって2倍ほど違います。

こうした厳しい環境にもかかわらず、P. オーストラリスは適応と繁栄に成功しました。

正確な年齢を特定するのは困難ですが、その規模や成長速度から、シャーク湾での出現時期は約4500年前と推定されています。

では、この厳しい環境で、P. オーストラリスはいかに増えていったのでしょう?

「地下茎」によりクローン増殖

P. オーストラリスの分布範囲
P. オーストラリスの分布範囲 / Credit: Jane M. Edgeloe et al., Royal Society B: Biological Sciences (2022)

P. オーストラリスが他の植物と異なる点として、その巨大さ以外に、染色体の数が通常の植物の2倍であることが挙げられます。

これは、専門家が「倍数体」と呼ぶものです。

ふつう、植物は両親から半分ずつ染色体をもらい、2本対になった「二倍体」の形をとります。

ところが、P. オーストラリスは受け取る染色体の数が2倍、つまり親からすべてのゲノムを受け継ぎ、複製しているのです(=クローン)。

こうした倍数体の植物は繁殖能力を持たない(不稔)であることが多く、そのままにしておくと、有性生殖(オスとメスの交配)なしに、無限に増殖できます。

これは意外と身近な植物にも見られる性質で、代表的なのはジャガイモです。