松井の渡米に怒った巨人軍の首脳が「松井が日本に戻っても、監督にもしない、コーチにもしない」と、断言したという話があります。なぜ日本の一流選手はメジャーに行きたがるのか。そこを考え、日本式野球からの脱皮を図るべきでした。
勝つことを優先する米国、負けないことを優先する日本という図式でしょうか。負けないことを優先しても、大局的にみると、ゲームをつまらなくし、結局、負ける。
田中将大(楽天出身)はヤンキースで活躍し、2015年12勝、16年14勝、17年13勝、18年12勝など、輝かしい成績を残しました。田中は楽天時代の13年に24勝無敗という日本記録を打ち立てました。田中がメジャーに転向する時、「日本では、自分が投げると、相手打者は『とても打てそうにない』と、始めからさじを投げていた。メジャーで力を試してみたい」と語っていたそうです。
次に、ゲーム展開のスピードです。日本では、解説者が「そこで間をとるのがいい」とよくいい、ゲームは長引き、間延びする。用もないのに、コーチが投手に近寄り、なにかささやく。米国では、最近、投手の投球感覚の秒数を制限し、それをオーバーすると四球扱いとなる。スピードアップの野球か、間延びの野球か。その差は大きい。
メジャーでは、ベース盤も広げた(38センチ→46センチ)ため、盗塁しやすくなったし、進塁でセーフになりやすくなった。打者に有利なルール変更です。大谷の新記録もこれに助けられています。
始球式に大谷の愛犬が登場し、ボールをくわえて、ホームベースにいるご主人のところに駆け込む。試合を楽しくするために、日本では想像もできないような試みを躊躇なくやる。
野口悠紀雄氏の近刊「アメリカはなぜ日本より豊かなのか?」(幻冬舎新書)を読んでいましたら、「アメリカの豊かさの源泉は、異質なものへの寛容と多様性の容認にある」という指摘をしていました。政治、経済、産業、企業、社会、レジャー、人種構成などあらゆる分野で、異質なものへの寛容と多様性の容認が見られるとことです。