光の影を踏んでみたくはありませんか?
カナダのオタワ大学(uOttawa)で行われた研究により、適切な条件ではレーザー光線が光を遮り「光の影」を落とせることが示されました。
レーザーによって作られた影のコントラストは最大で22%であり、これは晴れた日の木の陰のコントラストの値に匹敵します。
研究者たちは「この実験は影とは何かという私たちの理解を再定義するもので、適切な条件下ではレーザービームは影を落とすことができる」と述べています。
研究内容の詳細は『Optica』にて「レーザー光線の影(Shadow of a laser beam)」とのタイトルで公開されています。
目次
- 「光が光の影」を落とす
- 光が光の影を作る理論的説明
「光が光の影」を落とす
影を知ることは光を知ることでもある
人類の影に対する理解は、常に光に対する理解と並行して進化してきました。
影の研究と利用は芸術と科学の歴史にも深く刻まれています。
たとえば演劇の分野では、影は影絵として世界中のさまざまな文化で数千年にわたり存在してきました。
両手を交差させた「カニ」や片手の小指を動かす「イヌ」の影絵は、誰もが一度は見たり試したりしたことがあるでしょう。
また美術の分野では、ルネサンス時代の影の研究が西洋絵画における写実主義の発展に大いに貢献しました。
原始的な芸術として知られる洞窟壁画や古代エジプトの壁画が影をあまり意識しない一方で、ルネサンス期以降の絵画ではあえて「影を描く」ことで物体を写真のように描くことに成功したのです。
天文学の分野でも、日食や月食が「影の仕業」であることが発見され、月と太陽の大きさや距離が測定されるようになりました。
古代ギリシャのエラトステネスは紀元前220年頃に、垂直に立てた棒が作る影が緯度の高さによって異なることから、地球の大きさを測定したと言われています。