日本は根回しの国とも言われます。ものごとを決める際、事前に「よろしく」と調整するわけです。私も勤め人の時、取締役会付議の稟議事案は年中抱えていましたので役員に事前説明に行き、役員の顔色を見ながら了解を取り付けていくことは当たり前の業務でした。ひねくれた役員にはハンコの角度でどれぐらい同意したかの意思表示をする人もいて、さかさまに捺印されたこともありました。ならば捺印しなければよいのですが、「他の人がこれだけハンコを押しているのに俺だけ押さないわけにはいかないだろう」と。当時はさかさまのハンコでもとりあえず承諾を取り付けたと意気揚々だったのですが、今考えてみればおかしな話であります。

兵庫県知事選において県下の市長会メンバー29名中22名が稲村和美氏を支持すると表明したと報じられています。市長会が特定候補を支持するのは異例でしょう。また103万円の壁をめぐる件で全国知事会の一部から玉木氏の案に対し、7-8兆円の税収減に対する懸念が表明されました。玉木氏はこれは村上総務大臣の仕業と食って掛かり、大臣は知らぬ存ぜぬであります。正に根回しと足並みであります。ただ、市長会にしろ、知事会にしろそのメンバーは選挙で選ばれた方々であり、民の声にはどう対応するのでしょうか?

どちらのケースにしても何をもってそのような企てが行われているのか、またそれを仕切るリーダーは何を期待して根回しをするのでしょうか?会社なら方向性はある程度分かっているので理解できるのですが、政治に関することや国民の利益につながることを根回しするとなればあとで突き上げを食らったときどう言い逃れするのでしょうか?「私は賛同していなかったのですがね、同調圧力が強かったのでやむを得なかったのですよ」というのでしょう。では知事など人の上に立つ人が同調圧力に屈するレベルでよいのか、個々の考えや志はないのかと思うと寂しい思いがあります。

渡辺美樹氏のサブウェイ