レーベル先天性黒内障(Leber’s Congenital Amaurosis, LCA)は、網膜の光を感じる細胞(視細胞)の機能不全や変性が原因であり、光を視覚信号に変換する過程に障害が生じます。

またこれまでの研究により20以上の遺伝子がレーベル先天性黒内障に関わる原因遺伝子として特定されています。

その中でも代表的なレーベル先天性黒内障 1 (LCA1) はGUCY2Dと呼ばれる遺伝子に起こる変異であり、この遺伝子に問題が起こると、視細胞が光を感知する能力が低下してしまいます。

そこで今回、ペンシルバニア大学の研究者たちは、患者のGUCY2D遺伝子を書き換える遺伝子治療試験を行うことにしました。

正常な遺伝子をウイルスに詰めて網膜にお届けする

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Credit:Canva . 川勝康弘

試験にあたっては健康な人から抽出した正常なGUCY2D遺伝子をアデノ随伴ウイルス(AAV5)に組み込み、このウイルスを含む薬「ATSN-101」を網膜下に注射し、ウイルス感染を起こします。

使用されたアデノ随伴ウイルスは自身の持つ遺伝子を人間の遺伝子に送り込む機能を持っており、感染によって正常なGUCY2Dを患者の網膜細胞に届けることが可能になります。

正常な遺伝子が届けば、視細胞で不足していた酵素が生産されるようになり、光を感知する能力も回復する可能性があります。

研究では3人の小児を含む15人が参加しており、様々な容量のATSN-101が投与されました。

また患者たちは薬の投与後、回復レベルを調べるために、さまざまな明るさに設定された簡単な経路を進むテストが行われました。

患者の重症度には個人差があったものの、治療前では患者の多くが経路を進むのに困難を感じていました。

しかし治療を開始してから1カ月で症状に改善がみられ、一部の患者では視力が100倍改善し、最大投与量を与えられた9人中2人では1万倍の視力の改善がみられました。