まず前提として、現役士業の100パーセントが業務用ソフトを完備しているかというと、そうとは言い切れません。60歳を超える人たちも現役で働いている世界ですから、時代背景などから鑑みてもこの年代では少なからずパソコンが得意でない人たちがいます。そのため、2012年現在でも手書きで書類をつくっている士業はいるのです。
顧客にとっては書類の美しさよりも「許可が通るかどうか」「申告が無事に終えられるかどうか」が最重要ポイントなので、たとえば値段が安ければ手書きでも何でもよいというお客様は決して少なくないのです。
私自身も初めて宅建業許可の変更届の仕事をしたときはワープロ印字ではありませんでした。手書きで書類をつくってお客様に押印をいただいたりしましたが、手書きだから値下げを要求されたとか、依頼を断られたということは一度もありません。
実際に株式会社の経営者になって税理士に仕事を頼むようになって、税理士がつくった手書きの書類や届出に押印する機会があっても、「こういうものか」としか感じません。ですから、「手書きで申し訳ありません」というようなネタばらしを自分からしない限り、意外とお客様は気にしないものです。
ただ、だからといって手書きでつくった書類に比べれば、業務ソフトを使ってワープロ印字をしたほうが書類としては美しいので、早目に導入したいものです。
会計ソフトのような日常的に使うものや顧客メリットがあるものは購入する税理士の会計ソフトのように、最低限必要なソフトは入れる。最初はこれでかまわないでしょう。そのほか、書類をつくるにあたってすべての業務にソフトが必要なわけではありませんので、ワードやエクセルなどで代用できるものは代用しましょう。契約書や内容証明、登記書類などはワードでも十分つくることができます。
ただし、できる限り導入したいのが、行政書士や司法書が取り扱う「電子定款」のような、顧客にメリットがあるソフト類です。