属名の「ボレアロペルタ」は北国のカナダで見つかった鎧竜の意を汲んで「北の盾」を意味する言葉です。
この化石標本は死亡直後、すぐに海底に沈んで泥砂の中に埋もれたことで無酸素状態に置かれ、微生物による分解が防がれて、生前の姿をほぼ完璧に留めることができました。
そして驚くべきは骨でできた装甲部分はもちろん、それを覆うケラチン層までちゃんと保存されていたことです。
そこでUCLAの古生物学者であるマイケル・ハビブ(Michael Habib)氏は改めて、B. マークミッチェリのケラチン層を調べることにしました。
車に高速でぶつかられても平気!
ハビブ氏がB. マークミッチェリの化石を調べた結果、骨の装甲を覆うケラチン層はこれまで予想されていたよりもはるかに分厚いことが明らかになりました。
それは数ミリ〜数センチという薄い層ではなく、場所によっては約16センチもの厚みがあったのです。
現代の牛の角を覆うケラチン層でも約1.5センチ程度ですから、これがどれだけ驚くべきことかがわかるでしょう。
ハビブ氏らはこのデータを元に、B. マークミッチェリの装甲がどれほどの衝撃に耐えられるかを試算してみました。
すると彼らの体は1平方メートルあたり12万5000ジュール以上のエネルギーに十分に耐えうることが示されたのです。
ハビブ氏いわく、これは「自動車に高速でぶつかられたときの衝撃に匹敵」し、B. マークミッチェリは「スピードを出しているF-150(フォード)に体当たりして撃破できる可能性がある」といいます。
またハビブ氏は、B. マークミッチェリだけでなく、他のほとんどのアンキロサウルス類の種も同様の分厚いケラチン層を持っていたのではないかと考えています。
この結果を受けてハビブ氏は「アンキロサウルスたちが生きていた時代の環境を考えると理にかなっている」と指摘しました。