その理由の一つは、アンキロサウルスの装甲を覆う「ケラチン層」がうまく化石化しないためです。
(※ ケラチンは人の爪や髪の毛を作る主成分の一つ)
アンキロサウルスの装甲はカメの甲羅と同じように、骨からなる骨板とその表面上を覆うケラチンプレートでできています。
カメの甲羅では、骨でできた部分を「甲板(こうばん)」と、甲板を覆うケラチン層を「鱗板(うろこばん)」といい、この2層構造のおかげで非常に頑丈な作りとなっているのです。
しかしケラチン層は骨と違って腐敗しやすいので、化石化しにくくなっています。
アンキロサウルスの化石においても、骨でできた装甲部分はよく見つかるのですが、それを覆うケラチン層がうまく保存されておらず、衝撃への正確な強度が確かめられませんでした。
ケラチン層にどれほどの厚みがあったかで装甲の強度は大きく変わるので、これは無視できない重大な問題となります。
ところが2017年になって、この現状を一挙に覆してくれる奇跡のような化石の存在が公表されたのです。
まるで恐竜のミイラ。奇跡のようなアンキロサウルスの化石
まずはその実際の写真を見てみましょう。
こちらです。
まるで恐竜のミイラのように全身がほぼ完全な状態で保存されており、公表された当時は世界中の古生物学者たちを驚嘆させました。
これは今現在でも、過去に見つかった恐竜化石の中で最も保存状態の良い標本の一つとされています。
こちらの化石標本は2011年にカナダ・アルバータ州の白亜紀地層から発見されたノドサウルス科の一種です。
発見後、技術者のマーク・ミッチェル(Mark Mitchell)氏が5年の歳月をかけて、余分な岩石を慎重に取り除き、上のような研究可能な状態にまで復元しました。
そのため、本種の学名は「ボレアロペルタ・マークミッチェリ(Borealopelta markmitchelli)」と命名されています。