経産省において、「当該男性」以外の職員に対して女子トイレの利用を一般的に認めたわけではありません。先述の通り、当該男性は性同一性障害者で、外見は女性に見える者として(現時点までに10年以上)職場で扱われていたという特殊事情がありますから、職場に相談も無く突如として女装して女子トイレを使わせろと言ってきても応じる義務はありません。
ましてや、不特定多数の人々の使用が想定されている公共施設・民間施設の使用の在り方について触れるものではありません。これは昨年の最高裁判決の際も誤解が生じていたところです。
経産省の措置は当該男性からの行政措置要求に対する人事院の再判定によるものまた、令和6年=2024年の10月11月に経産省が当該男性の女子トイレ利用を認めたのは、男性による行政措置要求に対する人事院の再判定(最高裁では人事院の前の判定が問題となった)が行われたことによって生じたことです。
この話では、裁判所・司法制度の話ではありません。
また、今年の9月の時点では「未だに当該男性への女子トイレの使用制限が行われている」という報道が朝日新聞から為されており、それを受けた一部の人らが「司法の軽視!」というヒステリックな反応を見せていたことが観測されました。
しかし、前項で指摘した通り、俗に「経産省トランスジェンダー訴訟」と呼ばれる裁判は、当該男性による人事院に対する国家公務員法86条に基づく行政措置要求の判定を扱ったものでした。これは取消訴訟でした。
取消判決の拘束力は、同一事情であっても、裁判所が判決理由中で認定判断したものとは別の理由や別の手続によれば、同一内容の処分をすることは妨げられていません。