しかし研究者たちはこれまで、シシャモの大群とタラの群れがぶつかったときに、どれほどの規模の捕食イベントが発生しているのかを詳しく測定したことがありませんでした。

そこでMITを中心とする研究チームは音響システムを駆使して、シシャモとタラの間でどのような相互作用が起こっているかを調べてみることにしました。

数時間で1000万匹が食べられていた!

研究チームは今回、2014年2月にノルウェー沖のバレンツ海で収集した音響データを再分析しました。

この音響技術は「海洋音響導波路リモートセンシング(OAWRS:Ocean Acoustic Waveguide Remote Sensing)」と呼ばれるものです。

これは調査船の底部に設置された音響アレイを使って、海中のあらゆる方向に音波を送信し、魚の浮き袋に反響させます。

浮き袋は空気の詰まった袋状の器官であり、魚はこれを使って海中での浮力を自在に調節しています。

実はこの浮き袋は魚の種類ごとに音波の反響の仕方が変わるので、その差を見分けることで魚の種類を特定できるのです。

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a:OAWRSが50秒間で調査できる範囲を示した図、b:OAWRSの図解。垂直に降ろした音響アレイが送信用で、水平に曳航させたものが受信用 / Credit: Nicholas C. Makris et al., Communications Biology(2024)

もちろん、浮き袋の反響パターンを見ることでシシャモの群れなのか、タラの群れなのかも識別できます。

研究主任のニコラス・マクリス(Nicholas Makris)氏によると「タラには大きな浮き袋があって、ビッグベンの鐘のように低い共鳴音を発するのに対し、シシャモの小さな浮き袋はピアノのハイトーンのように響く」といいます。

これを踏まえて2014年のデータを新たに分析した結果、全長10キロ以上にわたる最大2300万匹のシシャモの大群が捉えられました。