これはある種、犯人逮捕という組織目標を踏まえて自主的に出動するという自律性が発揮される、というシーンです。
これは、組織の構成員一人一人に役割が明確に規定されている=目標が明確で、かつ役割の遂行に対してルール(枠組み)や権限が明確な場合の方がむしろ自主性・自立性が発揮されることを意味します。
つまり、しばしば語られるピラミッド組織の弊害=社員の自主性を奪う、という主張は必ずしも組織形態(ハード)から生じる構造的な要因ではないことがわかります。原因は、不明確な目標・責任範囲・権限といったルール(ソフト)の問題なのです。
ピラミッド組織においても、適正なルールがあれば自主的なPDCAを回すことができる女優:真矢みき演じる沖田管理官がごりごりのマイクロマネジメント(=手段・手法を細かく規定する管理)をしている間、犯人の特定にすらいたらず、潜伏場所の特定に苦慮します。
しかし、室井管理官に指揮権が移り、目標の設定のみを行い「やり方はこのエリアに詳しい君たちに任す」とした瞬間から、解決に向けて現場の警察官たちの動きが活性化されました。このシーンからも、一般的に言われているピラミッド組織のデメリットは構造的な問題ではないことが言えます。
株式会社識学も設立4年で東証マザーズを果たしましたが、経営者界隈で「あそこはマーケティングがうまかった」と評価されています。
これは厳密にいうと誤りで、何もマーケティングの大家が社内にいたとか、特別なノウハウをもったコンサルがついていた、ということではありません。
あくまで、「見込み客を単月○○件獲得しなさい」という明確な目標=責任があり、それに向けた予算権限があり、手段手法はマーケティングチームがトライアンドエラーを繰り返しながら正解にたどり着く、この繰り返しから生み出された成果なのです。
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冨樫 篤史 2002年、立教大学経済学部を卒業後、株式会社ジェイエイシージャパン(現ジェイエイシーリクルートメント)に入社。おもに幹部クラスの人材斡旋や企業の課題解決を提案。12年従事したのち2015年10月に識学に入社。大阪支店の支店長などを経て、現在は品質管理部の部長および識学マネジメントカレッジの主席研究員として従事。