ケーキ破損は輸送段階ではなく倉庫内作業時に起きた可能性
まず今回の冷凍クリスマスケーキの破損原因について久保田氏はいう。
「まず、Xで指摘されているような、輸送途上での事故である可能性は低いと考えています。というのも通常、破損した荷物であれば外側の梱包にも傷が付いていることがほとんどで、中身だけが破損しているケースというのはほぼないからです。そのため梱包が破損していれば、ドライバーが気付いてきちんと報告するはず。また配送されている荷物は、消費者に届くまでの輸送の履歴を追跡するトレーサビリティシステムがあり、車両単位で特定することが可能です。今回の件で高島屋が原因を特定することができなかったということは、輸送の段階では問題なかったという可能性が高いでしょう。
ドライバーが荷物の破損に気付いたもののミスを隠していたという可能性は、あまり考えられません。貨物自動車運送事業輸送安全規則という法律では、トラックドライバーの事故歴や健康状態など、ドライバーの情報をまとめた名簿である運転者台帳を作成することが義務付けられています。ですから一般的には、まったくの未経験や日雇いのドライバーはほとんどいません。特に冷凍冷蔵車のドライバーの場合、アルバイトであるケースはあまり考えられませんので、一時の責任逃れでミスを隠すようなケースはほとんどないはずです。
また仮に、ドライバーの責任で荷物を破損してしまったとしても、運送業ではそういった破損事故は常に起こり得ることですので、事故処理の対応にも慣れている場合が大半です。特に今回の高島屋のクリスマスケーキを運送していたヤマト運輸など大手運送会社では、そういった破損事故の際の対応方法や保険補償制度などについてきっちり取り決められているはずですので、ヤマト運輸側のミスや落ち度で破損した荷物を、そのまま配達したというのは考えにくいのです」(久保田氏)
では、原因として考えられることは何か。
「製造工場やケーキを保存する冷蔵庫内で、何かしらの事故や管理ミスが起こったという可能性が考えられます。クリスマスケーキのように数が限られていて、物量がそこまで多くない物の場合、庫内で運ぶ際は手作業で積んだり、フォークリフトを使ったりして運ぶことが多いです。まだ冷凍されていない不安定な生もののケーキを、積み込み作業する段階でのミスの可能性はあるのではないでしょうか」(同)
ちなみに高島屋の会見では、ケーキ製造後の冷凍期間を前年は2週間かけていたところ、今回は約1日に大幅短縮したことも発表していたが、その冷凍期間短縮とケーキ破損の因果関係までは明らかにされていない。