国会での政治資金規正法改正論議で求められること

今後の国会の最大の焦点は、政治資金規正法改正である。

「派閥政治資金パーティーをめぐる問題の再発防止策」を強調する自民党案が全く評価できないことは言うまでもない。そもそも、今回の「裏金問題」、検察は裏金の実態を何一つ解明せず、すべて「政治収支報告書不記載事件」で片づけてしまい、自民党の調査でも裏金の実態は何に一つ明らかになっていない。事件の中身も不明のまま「再発防止策」など論じても意味がない。

自民党案では、議員本人に収支報告書の「確認書」の作成を義務づけたうえで、会計責任者が虚偽の記載などで処罰された場合、内容を確かめずに作成していれば公民権を停止する、という措置を「連座制」と称しているが、そもそも、政治資金規正法違反の問題が生じる場合も、収支報告書の外形は整っているのであり、それを会計責任者から説明させて「確認」しただけでは何もわからない。「内容を確かめずに作成」の場合に公民権停止と言っても、どの程度に確かめたらよいのかが不明確であれば実効性はない。

一方、立憲民主党が公表している政治資金規正法改正案【「本気の政治改革」実現に向けた法制上の措置 骨子(全体像)】を見ると、現時点では考え得る限りの改正案が網羅されている。私も、昨年12月から今年1月にかけて、立憲民主党国対ヒアリングに3回出席して、政治資金規正法に関する問題を詳しく説明し、法改正の方向性も提案したが、私の提案も十分に踏まえたものになっており、今回の裏金問題を受けての政治資金制度改正としては十分に評価できる。

私が、同国対ヒアリングで再三指摘した「政治資金規正法の『大穴』問題」(政治家には政治献金を受け入れる複数の「財布」があるので、政治家本人が裏金を受領した場合に、その帰属が特定できず処罰が困難であるという問題)についても、

政治団体の収支報告書について、会計責任者に加え、代表者にもその記載及び提出を義務付ける

ことでほぼ解決できるし、企業団体献金の禁止(最低限、政党支部への企業団体献金の禁止)が実現できれば、国会議員が政治献金を受け入れる複数の財布を持つ必要もなくなる。

「連座制」についても、立憲民主党案は、「代表者の直接処罰規定の導入」であり、公職選挙法のような選挙運動での陣営幹部の処罰で自動的に当選無効となる「連座制」とは異なるので、私が【「裏金」事件の捜査・処分からすれば、連座制導入は「民主主義への脅威」になりかねない】で指摘した政治資金規正法への「連座制」の弊害も少ない。むしろ、それを「連座制」と称していること自体が誤解を招くので、むしろ、「代表者直接処罰制度」と正確に表現すべきだろう。

問題は、これまで、立憲民主党の姿勢が、自民党の政治資金改正案の批判に終始し、せっかくの自党の政治資金規正法改正案の内容を、世の中への理解浸透を求める姿勢が十分ではないことだ。まずは、党内で、所属国会議員が改正案の内容とその意義について十分に理解し、マスコミや支持者、支援者を通じて広く周知していくことだ。

「裏金問題」を受けての政治資金制度改正について、上記のような改正の必要性を地道に訴えていく努力を続ければ、全く不十分な対応しかできない自民党との違いは鮮明になり、それに加えて、従来の政治献金、パーティー券の拠出者であった大企業に有利な経済政策とは異なった方向の経済政策(消費税減税等)を提示していけば、次の選挙での大躍進の可能性も十分にある。

岸田首相にとって、大逆転を狙う窮余の「大英断」とは

今回の島根1区補選で「惨敗」した岸田首相について、窮余の「大英断」は、立憲民主党の政治資金改正案を「丸呑み」することだ。これをやられると、立憲民主党側にとって「攻め手」はなくなると同時に、旧来の自民党の「利権政治」は崩壊し、まさに自民党をぶっ壊すことになる。

目論見通り「派閥解消」を実現した岸田首相にとって、やろうと思えばできないことはない。党組織の大混乱は維新、国民民主党にも波及し、政界再編の引き金になる可能性もある。

これまで何度となく、独断で、重要な決定を突然打ち出してきた岸田首相である。この「大英断」を行えば、歴史に残る宰相となることも、あながち「夢物語」ではない。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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