しかし、一見、論理的に見える高市氏の「裏金議員への処分見直し否定論」だが、そこには重大な疑問がある。
まず、第一に、自民党の党紀委員会で決定された処分というのは、自民党という組織の中で、組織の論理の範囲内で議論され決定されたものであり、それに対して、国民から強い反発批判が生じているからこそ、岸田内閣の支持率が低迷し、現職首相の総裁選不出馬という結果につながったものだ。
今回の総裁選において、そのような岸田総裁の下の自民党内で行われたことを、既に一定の手続を経て決定済だという理由で、すべて「是」として見直さない、というのでは、自民党内では通用しても、国民に対しては全く理解されないだろう。
第二に、その党紀委員会の決定の前提事実に合理性があるのか、という問題である。裏金議員に対する自民党の従来の対応がなぜ国民から厳しい批判を受けているのか、それは、何と言っても、自民党の多くの議員が、政治資金として収支報告書で公開もしない「裏金」を得ていたことが発覚したのに、刑事処罰を受けないどころか、納税すらしないで済まされていることに対する納税者としての強い憤りである。
国民の多くは、裏金議員の中には、その金を個人の懐に入れていた議員が相当数いるのではないかと疑っている。裏金議員の側は、すべて「政治資金として使っていたもので、議員個人が懐に入れていた金はない」と説明し、自民党の側も、その弁解を丸呑みして、裏金はすべて「政治資金」との前提で、党紀委員会の処分が行われている。
党紀委員会の処分についての自民党の発表(【党紀委員会の審査結果について記者会見】)を見ても、派閥幹部として不適切な会計処理への関与が疑われた派閥幹部のほか、「不記載議員」については、
《過去5年において、自身の政治団体に多額、2000万円以上の不記載があった議員の政治的、道義的責任も重いとの判断でした。上記以外にも、過去5年において、自身の政治団体に相当な額、1000万円以上、もしくは500万円以上の不記載がある議員について、会計責任者に任せきりで不適正な処理としてしまった者の管理責任も問われるとの審査結果でした》