自民党総裁選に向けての出馬表明の動きが本格化してきた8月28日、本欄の記事【自民党総裁選出馬会見、「政治とカネ」問題で「抜本改革」を打ち出せない小林・河野、他の候補者は?】で、岸田首相が総裁選不出馬に追い込まれた最大の原因となった「自民党派閥政治資金パーティーをめぐる裏金問題」の経過と、岸田首相の対応を振り返り、総裁選における「政治とカネ」問題の論点を整理し、その時点で出馬会見を行っていた小林鷹之氏と河野太郎氏の、この問題に対する会見での発言について論評した。
「裏金問題」への対応には、派閥から政治資金パーティーの売上のキックバック等を受け、政治資金収支報告書に記載しなかった議員(裏金議員)に対して、どのような対応を行うのかという問題と、このような「裏金問題」を含め、政治資金制度をどのように是正していくのか、具体的に政治資金規正法をどう改正していくのか、という二つの問題があり、これらについて、総裁選の候補者が、国民に全く評価されなかった岸田首相の対応とは異なるどのような施策が打ち出せるかが注目点だと述べた。
そして、小林氏、河野氏に共通する裏金に関する事実解明を否定する姿勢について、岸田首相がこれまで国会答弁で繰り返してきたことと全く変わらないものであり、その理由とする
「捜査権を持つ検察以上のことは自民党にもできない」
というのは全くの誤りであることを述べた。
検察が行えることは、刑罰法令を適用し、刑訴法に基づく権限を行使して、証拠により犯罪を立証して処罰を求めることだ。適用する刑罰法令に問題があれば処罰が困難になり、刑訴法上の権限を用いることにも、黙秘権、令状主義等による制約がある。
一方、自民党として裏金の事実解明を行おうと思えば、「公認権」という党所属議員の生殺与奪の力を有している自民党総裁が、裏金受領議員に、受領の経緯、保管状況、使途について可能な限り調査して報告させ、十分な説明責任を果たすことを次期衆院選の公認の条件とすれば、相当程度の事実解明ができるはずだと述べた。