本来であれば、これだけの不祥事が続けば“ジ・エンド”となってもおかしくないが、それまで運営を担っていた広告会社の株式会社ノーマークが退き、読売クラブユース出身で元清水エスパルスでもDFとしてプレーし、カズや泰年監督とも旧知の仲でもある斉藤浩史氏が社長を務める自動車部品メーカーの株式会社協同が実質的な新オーナーとなり、クラブ名も「アトレチコ鈴鹿」と変え、再出発を図る。
泰年監督は今シーズン開幕直前に辞任したものの、ヴィッセル神戸(2003-12)で活躍し、女子サッカーの強豪INAC神戸レオネッサ(2022-23)でも監督を務めた元韓国代表MFの朴康造氏を新監督に迎え、鈴鹿は今2024シーズンを締めくくろうとしている。
カズが鈴鹿にもたらすもの
鈴鹿のチームは今、ピッチ内外で変革期の途上にある。そしてカズは、新宿戦のベンチ入りメンバーの平均年齢が25歳という若いチームを牽引する役割を担っている。
身から出た錆とはいえ、“不祥事クラブ”というレッテルを貼られたことによって、スポンサー集めに苦労していることは想像に難くない。クラブ名やエンブレムを新調したところで、失った信用を取り戻す作業は簡単ではない。
しかし、黎明期のJリーグを知り、セカンドキャリアでも成功した新オーナーの斉藤氏をトップに、カズがチームリーダー兼“宣伝マン”としてプレーする姿を見せることによって、徐々にではあるが、地元の支援も広がりつつある。まだ道半ばではあるものの、カズが鈴鹿にもたらすものは小さくないのだ。
カズは試合後、報道陣に対応し「下(降格)も気にしなければならないが、このクラブの目標はあくまで、クラブライセンスを取り、J3に昇格すること」と語った。その目標に到達するため、ピッチ内外を問わずチームに尽くし、有形無形の財産を鈴鹿にもたらす存在として、カズは必要不可欠なのだ。