臨床実験では、中国・貴州省の病院に入院しているうつ病患者75名を対象としています。
患者のうつ病レベルは「ハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)」として知られる診断ツールで評価されました。
rTMS治療の標的とするのは、先ほど述べた「背外側前頭前野(DLPFC)」と「眼窩前頭皮質(OFC)」です。
そしてチームは患者を次の3つのグループに分けました。
1つ目はDLPFCとOFCの両方の脳領域に磁場を用いたrTMS治療を行うデュアル(二重)グループ。
2つ目はOFCには偽の磁場を与え、DLPFCにだけrTMS治療を適応したシングル(単一)グループ。
3つ目がDLPFCとOFCともに偽の磁場を与えるコントロール(対照群)です。
1回の治療セッションは約5分間(1日で計20分間)続けられ、治療終了直後の5日目から症状がどれだけ改善したかを評価します。
その結果、事前の予想通り、デュアル(二重)グループでは他の2つのグループと比較して、うつ病の症状が有意に改善していることが認められたのです。
うつ病スコアは通常、治療開始前から少なくとも50%低下した場合に「臨床的に有効性がある」と判断されます。
それを基準にすると、デュアル(二重)グループではほぼ半数(48%)の患者がわずか5日間の治療でこの水準をクリアしていました。
他方でシングル(単一)グループで、うつ病スコアの50%減をクリアしたのは5人に1人弱(18%)、対照群では20人に1人未満でした。
さらに4週間後のフォローアップ調査では、デュアル(二重)グループの61%の患者がこの水準をクリアしていました。
この結果を受けて、ケンブリッジ大学の精神科医であるヴァレリー・ブーン(Valerie Voon)氏はこう話しています。