このように民法627条に定める解雇自由の原則を明確にした上で、不当解雇をネガティブリストで排除し、法律で決められた補償額を条件に解雇を可能にする。補償額は勤続年数などに応じて最低額を法律で定め、当事者の合意で決める。
この改正案のポイントは、基本的には労使の合意だけで金銭解決できるということである。どうしても当事者が合意できない場合には裁判が必要になるが、現実の解雇訴訟も70~80%が和解で解決しているので、補償額が法律で決まれば裁判で争うメリットは少ない。日本でも外資系企業は、解雇のとき「訴訟を起こさない」という誓約書をとって退職金を加算している。
日本の解雇規制の最大の問題は、金銭解決ルールが法律で決まっていないことだ。その背景にはすべての解雇を不当と決めつけ、金銭解決を拒否する労働法学者や弁護士の圧力がある。結果的にはそういう近視眼的な「法律家の正義」が労働市場を硬直化させ、賃金を低下させているのだ。
小泉氏(あるいは彼のチーム)はあらためて労働法制を勉強し、これまでの改正論議をふまえて地に足のついた議論をしてほしい。
【追記】楊井文人氏の記事で上の推測が裏づけられた。小泉氏は出馬会見の質疑でこう答えている。
今の労働契約法の判例の中で4つの要件があって、それを満たされないと人員整理が認められにくい、この状況を変えていくこと、それが私が考えていることです。
特にこの4つの要件の中の2つ目ですね、この人員整理をする際に、解雇を回避することをしっかり努力義務を履行したか、これが問われます。そこの部分が、今は希望退職者の募集とか配置転換などの努力を行うことというふうにされています。