以上の結果をまとめると、人間はコヨーテが好む農地や都市環境を増やし、コヨーテのライバルを排除するという2つの恩恵を与えて増殖の下地を作り、その上で不徹底な駆除を行って種の若返りを誘発しまいました。
ある意味で、ジャンプ台を用意して上から押さえつけたのと同じと言えるでしょう。
結果、コヨーテの個体数は反発を起こすようにして増加していきました。
この結果は複雑な自然界においては「狩れば減る」という単純な予測が非常に危険であることを示しています。
野生動物に異常な増加を起こさせないためには、単にターゲットとなる動物を殺すだけではなく、種全体の年齢ピラミッドや捕食者となる種やライバル種の数も考慮に入れて総合的な判断が必要となるでしょう。
実際、今回の調査を行った研究者たちは「コヨーテの個体数を減らすのには短期的な駆除よりもライバル種が長期にわたり存在し続けるほうが重要だった」と結論しています。
現在、日本各地で野生動物の個体数が増加したり、人間の生活圏に入り込むという事件がみられます。
私たちはそれに対して、たびたび駆除を行い続けています。
「人間の活動は生態系に大きな影響を与える」ということは誰もが知ることですが、コヨーテの例は短期的な対処療法がかえって予想できない悪影響を及ぼす可能性を示しています。
コヨーテの「狩ると増える」という結果は、自然界から人間への警鐘となるのかもしれません。
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参考文献
Coyotes Thrive Despite Human and Predator Pressures
https://www.unh.edu/unhtoday/2024/10/coyotes-thrive-despite-human-predator-pressures
元論文
People or predators? Comparing habitat-dependent effects of hunting and large carnivores on the abundance of North America’s top mesocarnivore
https://doi.org/10.1111/ecog.07390