なお、ショルツ首相はインタビューの中で、首相自身が社会民主党、緑の党、自由民主党3党から成る連立政権の崩壊を意図的に誘導したという批判に対し、「私は何も挑発していない。3党連立を維持するために最後まで努力したが、最終的には不可能だった。私は妥協と協力のために嫌な顔もせずに取り組んできた。しかし終わる時が来たなら、終わらせるべきだ」と説明している。

ところで、ドイツの今後の政治日程では対外的には少々問題が生じる。来年1月20日には米国で当選したトランプ氏が第47代米大統領に就任し、第2期トランプ政権がスタートする。その時、「欧州の盟主」ドイツでは少数派のショルツ政権が継続されていれば、トランプ新政権はショルツ少数派政権を交渉相手としないだろう。また、ドイツは欧米諸国のウクライナ支援では米国について2番目に多い。ドイツで少数派政権が続ければ、欧米主要国は重要な議題をドイツと議論できない。

ショルツ首相が主張するように来年3月に選挙が実施されたとすれば、新政権が発足するまで少なくとも2カ月余りかかる。とすると、米国や他の欧州主要国と重要な問題を話し合える新政権がドイツで発足するのは早くても来年5月頃だ。残念ながら、ウクライナ情勢、そして中東問題はドイツで新政権ができるまで待っていないだろう。ドイツは「欧州の盟主」としてその役割を果たすためには来年早々に新政権を発足させなければならない、という判断が生まれてくる。

連邦および州の選挙管理当局は11日、早期連邦議会選挙に向けた準備に入る。連邦選挙管理官ルート・ブランド氏はショルツ首相宛ての書簡で、短期間の準備に伴う「予測不能なリスク」を警告している。

CDUのメルツ党首は独週刊誌「シュテルン」で、「信任投票が実施されるまではSPDが望む法案の審議には応じない。ショルツ首相の13日の政府声明が良い機会となる」と述べている。ショルツ首相がメルツ党首の提案を受け入れ、クリスマス前に自身の信任案を提出し、連邦議会を解散し、来年1月中旬には総選挙を実施したとしても、新政権発足は来年3月頃だ。明確な点は、ドイツの与野党の政治家たちは今年はクリスマス・シーズンを家族と共にエンジョイすることは出来ないことだ。