莫大な資産があることは隠されたまま

――ザイム真理教は、いつ頃から流布されるようになったのでしょうか。

森永氏 私は、1980年に社会に出て日本専売公社(現JT/日本たばこ産業)の主計課という、大蔵省から予算もらってくる部署に配属されたんですけど、その頃からおかしくなってきたんです。きっかけは、1973年に石油ショックが起きて、景気対策として国債を発行したこと。意外と多めに。それが10年たつと返済しなければいけないから、財政を締めないとダメだと言い始めました。“財政再建元年”と当時の大蔵省の役人が言い出して、それでおかしくなったんです。だって10年で返す必要なんてまったくないんですから。

 一方、バランスシートに資産がたくさんあることを、ずっと財務省が隠し続けていたんですね。国の財務書類という統計は、高橋洋一さんという、いま嘉悦大学にいらっしゃる方が財務省在任時代につくりました。役人の習性で、一度つくった統計を途中で辞めるのは難しいんです。前例踏襲で仕事をするからです。

――国の資産にも「売れるものはたくさんあり、売れないものはほんの一部にすぎない」と書かれています。

森永氏 はい。財務省は「まったく売れない」と言っていますが。そんなことはありません。一番巨額なのは、世界でもっとも流動性が高くて売りやすい米国国債。それが100兆円くらい。あと地方債などで、全体の7割が金融資産です。土地・不動産については、一等地ばかりなので全部売れます。それらをひっくるめると、国には、ざっと1100兆円も資産があるんです。

――家計にたとえれば、収入を上回る借金をして、毎年借金だらけではないのかと言われたら、確かににそのとおりだけど、実は、その人はとんでもない資産家だったということでしょうか。

森永氏 そうです。私の試算では、2020年度末で8兆円しか借金ないんですけど、その後、岸田政権がものすごい財政の引き締めをして、日銀も国債を大量買い入れしていますから、おそらく現時点では、間違いなくプラス。貯金を抱えているんです。貯金を抱えているのに「増税をするぞ」と言っているんです。