理工系の学生にとって地方公務員は眼中にない?

 民間企業のなかでも給与水準が飛躍的にアップしているのはAIを中心とするIT人材である。理工系の学生は民間にどんどん流れ、1月15日付け毎日新聞によると、同紙が実施したアンケート調査で、23年度の47都道府県の採用試験で土木や獣医など技術・専門職の採用予定数割れが起きたという。

「IT企業がAI人材に対して高額の初任給を用意するケースも出ているが、ここまで高い賃金が用意されると、少なくとも理工系の学生にとって地方公務員は眼中にないと思う。しかも理工系出身の職員は役所であまり出世しないので、地方公務員を目指す学生は少ないと思う」(中野氏)

 それだけではない。会社員と公務員の最も大きな違いである身分保障でも、公務員の優位性が揺らいでいる。要因は転職市場の拡大だ。

「人手不足なうえに労働市場が流動化して転職がきくようになっているので、身分保障が重みを持たなくなった。さらにネットへの書き込みなどで以前から分かっていたことだが、公務員の職場環境がブラックであることも明らかにされている。また、大震災が発生すれば地方公務員が真っ先に現場に駆けつけて対応に奔走している実態を報道で見て、簡単な仕事ではないと分かるようになった。こうして、冷静に考えて地方公務員になることは釣り合わないと考える学生が増えている」(中野氏)