但し、トランプ氏は外交に関しては比較的自由奔放なところがあります。理由は外交こそ議会の枠組みから外れる大統領特権だからです。もちろん、議会承認が必要なこともあります。たとえばウクライナの支援は議会がその予算と支払いを承認しないと実行できません。ですからバイデン大統領と言えども好き勝手出来なかったのです。ところがトランプ氏はそれを止めるわけですからそんなのは議会承認はいりません。その上、このままでいけば議会は上院下院とも赤、つまり共和党が過半数を占めることになりそうで外交に関してはかなり自由度が高まります。

トランプ氏は既にパリ協定離脱の準備をしていると報じられていますが、これなども公約として手を付けやすいから行うのでしょう。

ところが内政に関してはいくらトランプ氏でも手を付けやすいところとそうではないところがあります。関税にしても本当にその言葉通りに行くのか、当然世界の首脳はトランプ氏に「それは止めてください」と伝えるでしょう。アメリカ向け自動車産業はメキシコ経由が多い中、体力が衰えている日産自動車など一発で吹き飛んでしまいます。

またトランプ氏の支持層の最大のボイスは経済対策や物価対策ですが、支持層の生活改善をどう図るのか答えを出さねばなりません。当初の目論見は産業の国内回帰とドル安誘導⇒輸出競争力強化⇒企業業績の更なる改善⇒労働者への報酬増だったはずです。しかし、ドル指数は少なくともトランプ氏当選後は上昇しています。

EVへの補助金は止めるか減額するのではないかとされますが、マスク氏が重用される公算を考えるとこれも一筋縄には判断できません。他方、前向きな発言をするも具体性を欠く仮想通貨に関してはびっくりするほど強気相場になっており、ビットコインの価格は本当に10万ドルになるのではないかという勢いです。

このような過渡期、そして人々の詮索が交錯することを思惑相場というのですが、だいたいにして良いことはないのです。よってあえて戦略を立てるなら短期勝負で細かく利確をしていく方が賢明だと思います。私も北米ではそのスタイルで臨んでいます。そしてトランプ政権が始動し始める来年早々までは日替わりメニューになりやすく、噂で左右されるのでここは割り切り感が必要かと思います。