ですが、自己資本も手薄で、大手行が破綻した場合に連鎖倒産が出る可能性も大きい地銀株指数まで上がるのは、上げすぎでしょう。銀行業界に関しては、おもしろい情報が伝わってきました。

トランプは自分の思いどおりに金融行政を推進してくれる新しい連邦準備制度(Fed)議長を就任させたいようです。しかし一旦議長になったら自発的に辞任しなければ、大統領といえども強制的にクビをすげ替えるわけにはいかない決まりになっています。

そこで大統領に就任直後に、ジェローム・パウエル現議長に辞めてくれと頼むでしょう。そうなったとき、パウエル議長はおとなしく身を退くかと聞かれて、「いや、最後まで議長職をまっとうします」と答えたのだそうです。

すでに第1期トランプ政権の頃から、いかにも世間常識をわきまえたことば遣いや身なりも紳士然としたパウエル議長と、粗野でがさつで上品な言い回しなどできないトランプのあいだにはかなり性格的な軋轢があったようです。

どうやらパウエルは、去年の暮れには「どうもトランプの大統領選勝利は間違いなさそうだ」と考えたらしく、危ない銀行にとって最後の頼みの綱とも言える銀行ターム融資制度(BTFP)による融資期間を最長の1年ではなく、10ヵ月に絞って、ちょうど投票日直後あたりにこの制度を使った融資額がゼロになるように工夫していた形跡があるのです。

ですから、今後1~2ヵ月のあいだに全米各地で中小零細や中堅ばかりでなく、大手銀行の資金繰り難のニュースが出て来るでしょう。

パウエルとしては、自分の担当分野である金融業界を焦土と化してでも、トランプの思いどおりの政策は推進させないという、金融政策における自爆テロのようなことを着々と準備してきたのだと思います。

なぜエリートはトランプが嫌いなのか

自分のFed議長在任中に大手銀行がバタバタと破綻するようなことがあれば、自分の名声は地に堕ちるでしょう。それでもなお、トランプ政権に徹底抗戦しようとするのはいったいなぜでしょうか。