「強さによる平和」の原語であるラテン語の「Si vis pacem, para bellum」という表現は、圧倒的な覇権を誇って、どの勢力からの挑戦も受け付けなかったローマ帝国を描写した言葉である。
アメリカの歴史では、初代大統領ジョージ・ワシントンが、「強さによる平和」を訴えたうえで、ヨーロッパ列強との関係を断つ「相互錯綜関係回避原則」(日本の学校教科書で「孤立主義」として教えられている外交政策)を国是にしたと理解されている。終わりの見えない欧州の戦争に深く関わることは、ワシントンの教えの真逆の政策であり、アメリカの歴史に刻まれた「強さによる平和」の思想から導き出される態度とは言えない。
ゼレンスキー大統領は、コメディアンであった経歴を活かし、言葉を巧みに使うという評判がある。歴史的明言の引用なども好む。だがアメリカの歴史に深く刻まれた格言を、異なる意味で我田引水的に使っていく態度は、賢明とは言えない。パロディーのような扱いをするべき格言ではない。そのような態度は、トランプ氏の態度を硬化させるだけの結果しか招かないと思われる。
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