アムステルダムでの出来事が報じられた直後、ウィーンのユダヤ人広場にある記念碑で8日、11月のポグロム(ユダヤ人迫害)の追悼集会が開かれたが、ローゼンクランツ国民議会議長が同追悼に参加しようとしたところユダヤ人のデモ参加者により阻止される、という出来事があった。
オーストリアのユダヤ人学生連盟は記念碑の周りに人間の鎖を作り、国民議会議長に対して「ナチスを称賛する者の言葉に価値はない!」と告げた。ローゼンクランツ国会議長は「これは暴力だ」と反論したが、参加を断念するという出来事が起きた。オーストリア国営放送(ORF)は同国のナンバー2の立場の国民議会議長がユダヤ人青年グループによって追悼集会参加を拒否されているシーンを放映していた(「オルバン首相のウィーン訪問の波紋」2024年11月3日参考)。
ちなみに、同国民議会議長は極右「自由党」所属であり、ドイツ系民族主義の学生組織(Burschenschaft)に所属している。ブルシェンシャフトは、日本語では「学生結社」や「学生団体」と訳される。ブルシェンシャフトは、19世紀初頭のドイツで大学生たちが愛国主義や自由主義の理念のもとに結成した組織が起源だ。そのため、ブルシェンシャフトの中には伝統的なナショナリズム、保守的な価値観を持つ団体が多く、現在もドイツやオーストリアなどで活動している。ブルシェンシャフトの一部には、過去に極右的な思想や排外主義的な立場を持つメンバーが含まれ、時には反ユダヤ主義などの過激な思想と関わりを持つ者がいる。そのため、ブルシェンシャフトのメンバーであることは、極右勢力との結びつきが疑われることになる。
<ORF放送が報じたユダヤ人青年デモ隊とローゼンクランツ国民議会議長のやり取りの内容を可能な限り再現する>
ローゼンクランツ国民議会議長(62)はハラルド・ドッシ議会事務総長らを引き連れて追悼会にきた。追悼式のために準備された花輪は、デモ隊の横断幕と人間の鎖の前に置かれたが、デモ参加者は素早くその前に立ちふさがり、イスラエル国歌を歌った。