なぜなら、後者の意見を採用して成功できる人は、ある程度営業が理解できていて、今日すべきことがいつもわかっている人向きの考え方だからです。言い換えれば、努力すべき行為が決まっていて、売上を伸ばすためにしなければならないことがわかっているという人であれば、最初からオフィスを借りてよい意味で自分に心理的プレッシャーをかけて、短期間で成功するという選択もよいでしょう。
しかし、営業があまり得意ではない人に後者の意見を勧めることはできません。売上が伸びず、固定費に押しつぶされて廃業してしまう可能性があるからです。
初めて独立開業するなら、自宅兼事務所で十分です。朝起きてすぐ仕事に取りかかれますし、時間効率もとてもよいものです。事務所を借りるタイミングは、人を採用するようになってからでも間に合います。
私も独立開業して3年が経とうとしていた頃、スタッフを採用することになってから初めてオフィスを借りました。何も焦ることはないのです。
独立事務所を持つということは、あくまでも付加要素自宅兼事務所の場合、多くの人が気にする点は2つあります。
ひとつは打ち合わせの場所です。
「事務所で打ち合わせをさせてください」といわれても、打ち合わせをするスペースがないのですから、やりようがありません。この場合は「ご足労いただくのは恐縮です。御社に伺わせていただきます」と伝えて、お客様の会社に出向いてしまいましょう。私は常にこの方法でお客様の会社やご自宅に伺っていました。
この方法は「偉そうでない」「フットワークが軽い」として非常に印象もよいものです。ぜひ採用してみてください。
もうひとつ気になる点としては、お客様に「自宅兼事務所なのですか?」と聞かれたら、どう答えてよいかわからないというものです。
たしかに「まだ売上がないので、しょうがなく自宅で仕事をしているんです」というのは信頼を失う可能性があり答えにくいといえます。しかし、合理的な理由があれば、人は納得するのです。具体的には「人を採用していないので、今は自宅で十分なんです。事務所に来ていただくのも申し訳ないですし、伺うことが多いですから、独立事務所は必要ないですね」というような形で回答します。