以下、有効な抗生物質として活用される主な海洋微生物の例を紹介します。
ストレプトマイセス属という微生物は、結核菌やグラム陽性菌などに対しても抗菌作用を発揮します。
これは、あの有名な抗生物質ストレプトマイシンを作る海洋放線菌で、タンパク質合成を阻害することによりバクテリアの成長や代謝を停止させます。
また、同じく海洋放線菌であるミクロモノスポラ属は、抗菌作用を持つ新しい化合物を作り出し、グラム陽性菌を退治するその力には、今後の新薬開発にも期待が寄せられています。
最近の研究では、これらの微生物が強力な新しい抗生物質を生産し、その効果が確認されています。
人間の健康にとって、特に厄介なのが抗菌薬に対する耐性を持つ病原性細菌ですが、海洋微生物はこれに立ち向かう力を持っています。
例えば、メキシコで採取された海洋堆積物から、サリニスポラ属(ミクロモノスポラ属に近い種)の海洋放線菌が発見され、これらの細菌たちは、薬剤耐性菌であるESKAPE病原体(ほとんどの院内感染の原因となる重要な細菌種)に対して強力な抗菌力を示しました。
また、ストレプトマイセス属から作られたチオペプチド系抗生物質は、薬剤耐性菌のタンパク質合成阻害剤として使われ、黄色ブドウ球菌まで撃退してしまうという驚きの効能を持っています。
これ、いわゆるスーパー耐性菌を退治する新薬の原石ということです。
がんの増殖も抑え込む海洋微生物のパワー
海洋微生物は、抗生物質としてだけではなく、がん治療にも適用されつつあります。
研究によると、海洋微生物が生成するポリケチドなど70種類以上の化合物が、がん組織に選択的に作用し、その増殖の進行を抑えるとされています。