中国事業の立て直しはできるかもしれない
では、資生堂が行うべき施策は何であると考えられるのか。
「過去の成長の源だった中国市場とトラベルリテール市場は当分回復しないでしょう。免税品店を中心とするトラベルリテール市場での売上成長は、これまで中国人観光客の需要増によって引き起こされました。ところが、実はこれは旅行客が大量に化粧品を購入して、中国の都市部で並行輸入品として転売する需要にほかなりませんでした。これに対する規制を中国政府が強めたことで起きているのが、現在のトラベルリテール市場の縮小です。海南島の販売が一番大きく減っていることからも、そのことが理解できます。中国市場自体がデフレ経済に陥りかけていて、これまで中国で人気のあったSHISEIDOブランドも力を落としています。中国で成長をしていくというコロナ禍前の戦略ゴールは、すでになくなってしまったのかもしれません。
資生堂は400億円超のグローバルコスト削減を打ち出しています。その規模の経営合理化を進めるべきなのですが、欧州、アメリカ、中国どの市場でどのブランドを中心に合理化を進めるのか、思い切ったことをやらなければならないタイミングにあります。幸いにして日本市場だけはブランド力も相変わらず強く、売上・利益ともに成長の余地があります。どの市場を犠牲にして日本に経営資源を戻すのか、明確な経営判断が求められます」(鈴木氏)
資生堂が再び成長トレンドを迎えられる可能性はあるのか。
「経営に『もしも』の言葉をはさんでもあまり意味はないのですが、これまで売却してきた中低価格帯の化粧品ブランドや日用品などがもしも手元に残っていれば、中国市場ではもう少し違う展開ができたかもしれません。
ただ資生堂は決して事業売却だけを行ってきたわけではありません。昨年は640億円を投じてアメリカの高価格帯のスキンケア化粧品ブランドであるドクターデニスグロススキンケアを買収しています。幸いにして直近の決算でも同ブランドは収益増に貢献しています。その観点でいえば、この先の中国市場でも、新たなM&Aなどを通じて別のブランドを手に入れることでの、中国事業の立て直しはできるかもしれません。ブランドポートフォリオを入れ替えながら、成長の芽をより増やしていくような対応が功を奏すれば、再び資生堂が成長軌道にのる道はまだ残されていると考えます」(鈴木氏)
資生堂では魚谷会長CEOは24年12月31日付で退任し、藤原憲太郎社長が25年1月1日付でCEOに就任する予定。
(文=Business Journal編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)
提供元・Business Journal
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