資生堂が2024年12月期連結業績予想を下方修正し、純利益を前年同期比72%減となる60億円に引き下げたことが注目されている。同社は24年度1~6月期の純利益が同99.9%減の1500万円となったと発表した8月時点では、通期の連結予想を据え置き、純利益は220億円としていたが、3カ月後に160億円の下方修正を行ったことになる。資生堂自身が予測していなかった環境の変化が起きているとみられるが、背景には何があるのか。また、現在、同社は危機的な状況にあると考えられるのか、もしくは一過性の業績低迷なのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
トラベルリテール・中国の減速
資生堂は今、大きな転換期を迎えている。14年に日本コカ・コーラ元社長の魚谷雅彦氏が社長に就任して以降、大きな市場変化を受けて改革に取り組んできた。21年には、ヘアケア商品「TSUBAKI」や男性用ブランド「uno(ウーノ)」、ボディーケアブランド「シーブリーズ」を含むパーソナルケア(日用品)事業を欧州系大手投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズに売却。同年にはイタリアの高級ブランド、ドルチェ&ガッバーナとのライセンス契約を解消。今年2月には早期退職の募集も発表した。
こうした改革の一方、業績は安定しない。19年度には連結売上高、営業利益ともに過去最高を更新したものの、20年度は純利益が赤字に転落。21~23年度は黒字を維持しているが、1~6月期をみると20~21年度は赤字となっている。また、23年度の純利益は前期比36.4%減となった。
そして直近の24年度1~6月期の業績をみてみると、売上高は前年同期比3%増の5085億円と横ばいを維持したが、コア営業利益は31%減の192億円、純利益は99.9%減の1500万円。日本のコアブランド( 「SHISEIDO」 「クレ・ド・ポー ボーテ」など)や欧州の注力ブランドが好調だった一方、トラベルリテール(空港や免税店など旅行者を対象とした小売事業)と中国事業が減速。中国市場における価格競争激化による化粧品ブランド 「SHISEIDO」の売上減、中国人旅行者の購買行動変化・消費意欲低下などが響いた。
同社は24年度1~6月期の業績発表に際し、「トラベルリテール・中国の減速に対し、全社を挙げた追加施策で達成を目指す」として通期見通しは維持した。だが、今月7日、通期業績の下方修正を発表。売上高は1兆円から9900億円に、コア営業利益は550億円から350億円に、純利益は220億円から60億円に引き下げた。