グローバルには縮小均衡にならざるを得ない
同社は下方修正の原因について中国事業とトラベルリテール事業の不振をあげているが、経済評論家で百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏はいう。
「そもそも8月に発表した上期決算でコア営業利益が193億円と前年比30%割れしていました。本来はその段階で下方修正すべきでした。なぜなら下期のコア営業利益が357億円に増えない限り、今年2月に公表した2024年のコア営業利益550億円の見通しには届かない状況だったからです。とはいえ8月の段階では、一番の不振の元凶であるトラベルリテールと中国市場での不振について、中国経済が回復すれば下期で盛り返せる可能性があったため、下方修正の判断を遅らせたのでしょう。実際は中国経済の不振が続いているので、今回、通期を通じての回復はないと判断したのだと思われます。純利益が従来予想の220億円から60億円へと下方修正されていますが、これはほぼコア営業利益減少が影響したと考えて良いでしょう」
現在、資生堂は危機的な状況にあると考えられるのか。もしくは、あくまで一過性の業績低迷と考えられるのか。
「資生堂は構造的に過去のようには稼ぐことができない状況に陥っています。もちろんコア営業利益を通期で300億円台稼ぐ力は持っていますから、経営危機というまでの状況ではありません。ただ、構造としては、これまでの資生堂経営陣が不採算ブランドの売却や縮小に力をいれてきた結果、中低価格のブランドで稼げるものがほとんどなくなってしまいました。今の資生堂は日米欧中の各市場で高級品ブランドを武器に戦わなければならない状況です。
その状況で『構造改革を加速する』と宣言しているところを見ると、さらに不採算市場での投資を縮小することになると見られます。となると、グローバルには縮小均衡にならざるを得ません。成長できない、成長するための芽がないという点で、今の資生堂は深刻な状況にあると考えられます」(鈴木氏)